厚生労働省は3月26日に社会保障審議会・介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会を開き、「令和元年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」の結果概要を公表しました。2018年度に導入された「ADL維持等加算」について、算定率の低さが目立つ結果となり、今後議論が進んでいくと思われます。
2018年の介護報酬改定時に新たに導入された「ADL維持等加算」について、加算ⅠまたはⅡを算定している事業所は、調査全体のうち通所介護で2.6%、地域密着型通所介護で0.3%とごくわずかな事業所しか算定していないことが明らかになりました。
ADL維持等加算の算定要件は以下のようになっています。
①5時間以上の通所介護費の算定回数が、5時間未満の算定回数より多い利用者で、6月以上連続利用者が20名以上
②要介護3~5の利用者の割合が15%以上
③初回の認定から12月以内の利用者の割合が15%以下
④初月と6ヵ月目において事業所の機能訓練指導員がBarthel IndexにてADL値を測定し、その結果を厚生労働省に提出している利用者が90%以上
⑤6ヵ月目におけるADL値から初月におけるADL値を控除した値が多い順の上位85%について、ADL利得が「ADL利得が0より大きければ1」「ADL利得が0より小さければ-1」「ADL利得が0ならば0」として区分し、合計した数が0以上
⑥(Ⅱ)の場合、算定日の属する月にADL値を測定し、厚生労働省に提出していること
この中でも、要件①は事業所の規模によって満たすことが難しく、通所介護では80.4%の事業所が満たしていますが、地域密着型通所介護では12.4%の事業所しか満たすことができない要件になっています。
また、「ADL維持等加算を請求していない理由」と「ADL維持等加算について緩和・改善してほしいこと」のどちらも、単位数に関する回答が多い結果となりました。Barthel Index(バーセル インデックス)を用いた評価の負担や届出に関する事務負担が大きいですが、算定できる単位数が少ないという点も算定率が低い要因になっています。
※Barthel Index(バーセル インデックス)とは
広く用いられているADLを評価する指標。食事、車いすからベッドへの移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの10項目を5点刻みで点数化し、その合計を100点満点で評価する仕組み。
ADL維持等加算を算定している通所介護事業所を担当しているケアマネジャーへの調査結果では、サービスに与えた影響として、「定期的な利用者のADL評価がなされるようになった」、「ADL維持・向上のためのプログラムが増えた」、「利用者のアウトカム(ADL)が意識されるようになった」などの回答があり、介護サービスの質の向上につながっているという回答が多くありました。
今回の調査で明らかになった算定率の低さや算定することによるサービスの質の向上を踏まえて、2021年度改定に向けて検討が進むと思われます。動向をチェックしておきましょう。
引用:資介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業(結果概要)(案)※介護保険総合データベースにおける平成31年4月サービス提供分のデータを対象として分析。分析対象事業所数は表内に記載の通り
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年3月31日掲載のものです。
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