令和6年度介護報酬改定に向けた審議は現在、サービスごとの課題とその解消に向けた対応について2巡目の検討が行われたところだ。
今回は、明らかになってきた改定の方向性について介護老人保健施設、介護福祉施設、特定施設入居者生活介護それぞれの項目と施設・入居系サービス共通する対応について1つずつ確認していきたい。
介護老人保健施設では加算などの見直しのほかに、多床室料の自己負担化の問題がある。これは、3年前の審議で先送りされた論点だ。先送りされた理由は、介護療養型医療施設の令和6年3月の廃止に伴う介護医療院などへの転換手続を優先させたことにある。しかし、特養では多床室料は全額自己負担であり、次回改正後には介護療養型医療施設も廃止されて存在しないことになる。
もはや、老健の多床室料自己負担導入を進めるに当たって支障が無いのだ。
多床室の自己負担化が実現した場合、確実に長期滞在型の老健の経営を直撃する。長期滞在型とは、基本報酬で、「その他型」あるいは「基本型」を算定する施設である。これらの老健に長期滞在している入所者は、多床室料が全額自己負担となった場合、割安感の増した特養に移動するだろう。
老健の介護報酬単価が明らかに特別養護老人ホームより高いに関わらず、長期滞在型の事業運営が維持されているのは、多床室に介護保険が適用されている現状では実質的な支払金額の格差が少ないためだ。該当する老健は、早期に長期滞在型から脱却して、「加算型」まで引き上げることが急務だ。最終的には「超強化型」を目指すべきである。
老健の基本報酬は、「その他型」から「超強化型」まで5段階ある。その階段は、在宅復帰・在宅療養支援指標の点数の積み上げで決定される。
直近の検討ではこの指標のうち、「入所前後訪問指導割合」及び「退所前後訪問指導割合」の基準を引き上げる方向が示された。その結果、最上位区分の超強化型を算定する為のハードルは一層高くなるだろう。マネジメントにもレベルアップが求められる。
また、「支援相談員の配置割合」に係る指標においては、“社会福祉士の配置を評価する”とされた。特養の生活相談員は社会福祉士資格などが求められており、ハードルが高い。しかし、老健の支援相談員の資格基準は、“有る程度の実務経験”程度である。この部分で、社会福祉士資格が必要となれば、かなりの意識改革が求められるであろう。
これらの見直しに合わせて、「各類型間における基本報酬において、更に評価の差をつける」とされたことから、下位区分の「その他型」から「基本型」の基本報酬が引き下げられ、上位区分の「強化型」、「超強化型」の基本報酬が引き上げられる可能性が高まった。特養化した老健にとっては、多床室料の自己負担化と合わせてダブルパンチであり、経営の存続が危ぶまれる事態を想定しなければならない可能性がある。
(【画像】第231回社会保障審議会介護給付費分科会資料2より※今回見直しが検討されている指標を編集部が赤枠で強調)
個別の加算についてはまず、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算を、新たな加算区分を新設する方向だ。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。