【2024年度介護報酬改定】介護老人福祉施設(特養)の基本報酬は大幅引き上げ―改定前後の比較と新設加算9種の概要まとめ

2024.02.09
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2024年度の介護報酬改定後の算定構造や単位が公表され、介護老人福祉施設(特養)の基本報酬が大幅に引き上げとなることが明らかになっています(※リンク先:社保審・介護給付費分科会)。

また、加算についても、透析を要する入所者の送迎への対応を評価する「特別通院送迎加算」や、認知症の行動・心理症状(BPSD)への平時からの対応を評価する「認知症チームケア推進加算」など、9種類の加算が新設されます。

こちらのページでは介護老人福祉施設の基本報酬の新旧比較と24年度加算の概説をまとめています。

なお、2024年度介護報酬改定の実施日はサービスによって分かれており、特養の改定実施時期は4月1日です。

2024年度介護報酬改定|介護老人福祉施設(特養)は基本報酬を大幅に引き上げ

2024年度介護報酬改定で、介護老人福祉施設(特養)・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の基本報酬は、いずれの分類でも大幅に引き上げられます。

改定前後の基本報酬に関する比較表は以下の通りです。

【特養】2024年度介護報酬改定前後の基本報酬比較

※すべて1日あたり

基本部分 分類 単位数

(現行)

単位数

(改正後)

増減
介護福祉施設サービス費

(従来型個室)

要介護1 573単位 589単位 +16単位
要介護2 641単位 659単位 +18単位
要介護3 712単位 732単位 +20単位
要介護4 780単位 802単位 +22単位
要介護5 847単位 871単位 +24単位
介護福祉施設サービス費

(多床室)

要介護1 573単位 589単位 +16単位
要介護2 641単位 659単位 +18単位
要介護3 712単位 732単位 +20単位
要介護4 780単位 802単位 +22単位
要介護5 847単位 871単位 +24単位
ユニット型介護福祉施設サービス費

(ユニット型個室)

要介護1 652単位 670単位 +18単位
要介護2 720単位 740単位 +20単位
要介護3 793単位 815単位 +22単位
要介護4 862単位 886単位 +24単位
要介護5 929単位 955単位 +26単位
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費

(従来型個室)

要介護1 582単位 600単位 +18単位
要介護2 651単位 671単位 +20単位
要介護3 722単位 745単位 +23単位
要介護4 792単位 817単位 +25単位
要介護5 860単位 887単位 +27単位
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費

(多床室)

要介護1 582単位 600単位 +18単位
要介護2 651単位 671単位 +20単位
要介護3 722単位 745単位 +23単位
要介護4 792単位 817単位 +25単位
要介護5 860単位 887単位 +27単位
ユニット型地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費

(ユニット型個室)

要介護1 661単位 682単位 +21単位
要介護2 730単位 753単位 +23単位
要介護3 803単位 828単位 +25単位
要介護4 874単位 901単位 +27単位
要介護5 942単位 971単位 +29単位

(【表】「令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」(改正告示案。社保審了承済み)を基に作成)

介護報酬改定後の算定構造については、以下の資料をご参照ください。

第239回社会保障審議会介護給付費分科会【参考資料2-2】|厚生労働省

【介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)】9種類の新設加算

24年度改定で特養に新設される加算は、以下の9種類です。

  • 特別通院送迎加算
  • 協力医療機関連携加算
  • 退所時情報提供加算
  • 新興感染症等施設療養費
  • 認知症チームケア推進加算
  • 退所時栄養情報連携加算
  • 高齢者施設等感染対策向上加算
  • 介護職員等処遇改善加算(3加算の統合。24年6月創設)
  • 生産性向上推進体制加算

具体的な単位数や要件を以下に概説します。

①特別通院送迎加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

定期的かつ継続的に透析を必要とする入所者(家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事由がある者)に対し、施設職員が月12回以上の送迎を行った場合を評価する加算です。

加算名 単位数
特別通院送迎加算(新設) 594単位/月

特別通院送迎加算の算定要件

  • 透析を要する入所者であって、その家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事情があるものに対して、1月に12回以上、通院のため送迎を行う。

②協力医療機関連携加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

協力医療機関との実効性のある連携体制を構築するため、入所者の現病歴等の情報共有を行う会議を定期的に開催することを評価する加算です。

加算名 条件 単位数
協力医療機関連携加算(新設) 協力医療機関が下記の①~③の要件を満たす場合 100単位/月(2024年度)

50単位/月(2025年度~)

それ以外の場合 5単位/月

協力医療機関の要件

  1. 入所者の病状が急変した場合等に、医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること。
  2. 高齢者施設等からの診療の求めがあった場合に、診療を行う体制を常時確保していること。
  3. 入所者の病状が急変した場合等に、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。

協力医療機関連携加算の算定要件

  • 協力医療機関との間で、入所者の同意を得て、当該入所者の病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催していること。

③退所時情報提供加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

入所者が医療機関へ退所した際、生活支援上の留意点等の情報提供を行うことを評価する加算です。

加算名 単位数
退所時情報提供加算(新設) 250単位/回

退所時情報提供加算の算定要件

  • 医療機関へ退所する入所者について、退所後の医療機関に対して入所者を紹介する際、入所者等の同意を得て、当該入所者等の心身の状況、生活歴等を示す情報を提供した場合。(入所者等1人につき1回に限り)

④高齢者施設等感染対策向上加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

施設内で感染者が発生した場合の適切な対応を促すため、以下を評価する新たな加算が設けられます。

  • 新興感染症の発生時等に感染者の診療等を実施する医療機関(協定締結医療機関)との連携体制を構築していること。
  • 上記以外の一般的な感染症(※)について、協力医療機関等と感染症発生時における診療等の対応を取り決めるとともに、当該協力医療機関等と連携の上、適切な対応を行っていること。
  • 感染症対策にかかる一定の要件を満たす医療機関等や地域の医師会が定期的に主催する感染対策に関する研修に参加し、助言や指導を受けること。

また、感染対策に係る一定の要件を満たす医療機関から、施設内で感染者が発生した場合の感染制御等の実地指導を受けることも新たに評価します。

加算名 単位数
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(新設) 10単位/月
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)

(新設)

5単位/月

高齢者施設等感染対策向上加算の算定要件

<高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)>

  1. 第二種協定指定医療機関(感染症法第6条第17項に規定)との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること。
  2. 協力医療機関等との間で新興感染症以外の一般的な感染症の発生時等の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時等に協力医療機関等と連携し適切に対応していること。
  3. 診療報酬における感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に行う院内感染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること。

<高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)>

  • 診療報酬における感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関から、3年に1回以上施設内で感染者が発生した場合の感染制御等に係る実地指導を受けていること。

⑤新興感染症等施設療養費【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

必要な感染対策や医療機関との連携体制を確保した上で新興感染症などに感染した高齢者を施設内で療養を行うことを評価する加算です。

加算名 単位数
新興感染症等施設療養費(新設) 240単位/日

新興感染症等施設療養費の算定要件

  • 入所者が別に厚生労働大臣が定める感染症(※)に感染した場合に相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し、かつ、当該感染症に感染した入所者に対し、適切な感染対策を行った上で、サービス提供を行った場合に、1月に1回、連続する5日を限度として算定する。

(※)現時点で指定されている感染症はありません。

⑥認知症チームケア推進加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、あるいは出現時に早期に対応するための平時からの取組を推進するために新設される加算です。

加算名 単位数
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)

(新設)

150単位/月
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)

(新設)

120単位/月

※認知症専門ケア加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定している場合は、算定不可。

認知症チームケア推進加算の算定要件

<認知症チームケア推進加算(Ⅰ)>

  • 事業所または施設における利用者又は入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者の占める割合が2分の1以上であること。
  • 認知症の行動・心理症状の予防及び出現時の早期対応(以下「予防等」という。)に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者又は認知症介護に係る専門的な研修及び認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員から成る認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいること。
  • 対象者に対し、個別に認知症の行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施していること。
  • 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、認知症の行動・心理症状の有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を行っていること。

<認知症チームケア推進加算(Ⅱ)>

  • 認知症チームケア推進加算(Ⅰ)の(1)・(3)・(4)に掲げる基準に適合すること。
  • 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員から成る認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいること。

⑦退所時栄養情報連携加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

介護保険施設の管理栄養士が、介護保険施設の入所者等の栄養管理に関する情報について、他の介護保険施設や医療機関等に提供することを評価する加算です。

加算名 単位数
退所時栄養情報連携加算(新設) 70単位/回

対象者

  • 厚生労働相が定める特別食(※)を必要とする入所者または低栄養状態にあると医師が判断した入所者

退所時栄養情報連携加算の算定要件

  • 管理栄養士が、退所先の医療機関等に対して、当該者の栄養管理に関する情報を提供する。
  • 1カ月に1回を限度として所定単位数を算定する。

(※)疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づき提供された適切な栄養量及び内容を有する腎臓病食、肝臓病食、糖尿病食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓病食、脂質異常症食、痛風食、嚥下困難者のための流動食、経管栄養のための濃厚流動食及び特別な場合の検査食(単なる流動食及び軟食を除く。)

⑧介護職員等処遇改善加算【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

現行の介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた「介護職員等処遇改善加算」(4段階が設定)に一本化されます。

介護職員等処遇改善加算の単位数(介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の場合の算定率)

介護職員等処遇改善加算の算定単位は加減算後の総報酬単位数にサービス種別ごとに設定された加算率を掛け合わせて算出します。

介護職員等処遇改善(新設)

【介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】

14.8% 13.6% 11.3% 9.0%

※2024年度末まで経過措置期間を設け、経過措置期間中は、現行の3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、改定による加算率の引上げを受けられるようにすることなどの激変緩和措置を講じる。

介護職員等処遇改善加算の算定要件

  • 一本化後の新加算全体について、職種に着目した配分ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分を認める。
  • 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、新加算(Ⅳ)の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てること。
  • それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分すること。

⑨生産性向上推進体制加算【施設系(短期入所系、居住系、多機能系)サービス共通】

介護ロボットやICT等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、

  • 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、
  • 見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、
  • 生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、
  • 一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行う

こうした取組みを評価する加算です。

加算名 単位数
生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(新設) 100単位/月
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)(新設) 10単位/月

生産性向上推進体制加算の算定要件

<生産性向上推進体制加算(Ⅰ)>

  • (Ⅱ)の要件を満たし、(Ⅱ)のデータにより業務改善の取組による成果(※1)が確認されていること。
  • 見守り機器等のテクノロジー(※2)を複数導入していること。
  • 職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていること。
  • 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行うこと。

<生産性向上推進体制加算(Ⅱ)>

  • 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行っていること。
  • 見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入していること。
  • 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行うこと。

(※1)業務改善の取組による効果を示すデータ等について

  • (Ⅰ)において提供を求めるデータは、以下の項目。

    ア)利用者のQOL等の変化(WHO-5等)
    イ)総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間の変化
    ウ)年次有給休暇の取得状況の変化
    エ)心理的負担等の変化(SRS-18等)
    オ)機器の導入による業務時間(直接介護、間接業務、休憩等)の変化(タイムスタディ調査)
  • (Ⅱ)において求めるデータは、(Ⅰ)で求めるデータのうち、アからウの項目。
  • (Ⅰ)における業務改善の取組による成果が確認されていることとは、ケアの質が確保(アが維持又は向上)された上で、職員の業務負担の軽減(イが短縮、ウが維持または向上)が確認されることをいう。

(※2)見守り機器等のテクノロジーの要件

  • 見守り機器等のテクノロジーとは、以下のアからウに掲げる機器をいう。

    ア)見守り機器
    イ)インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器
    ウ)介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)
  • 見守り機器等のテクノロジーを複数導入するとは、少なくともアからウまでに掲げる機器は全て使用することであり、その際、アの機器は全ての居室に設置し、イの機器は全ての介護職員が使用すること。なお、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認することとし、当該利用者の意向に応じ、機器の使用を停止する等の運用は認められるものであること。

既存の加算の見直しなどを含む介護老人福祉施設(特養)の改定事項は32項目

ここまでに示した加算の新設や見直し等を含めると、介護老人福祉施設(特養)の改定事項は32項目あります。

※各改定項目の内容(概要、厚労省説明資料)はリンク先の資料をご確認ください。

第239回社会保障審議会介護給付費分科会【参考資料1】

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