2024年度介護報酬改定における「福祉用具貸与・特定福祉用具販売」の大きな変更点には「貸与と販売の選択制」の導入があり、これに伴い、事業所には新たに様々な対応が義務付けられることになります。こちらについては、利用者への説明・提案に関する必要事項やその後実施すべきモニタリング方法等も3月に入って示された解釈通知で新たに示されました。
また、3月29日に発出された通知によると福祉用具専門相談員のテレワークについても新たに「考え方」が明示されています。
なお、2024年度介護報酬改定の実施日はサービスによって分かれており、福祉用具貸与・特定福祉用具販売の改定は4月1日に実施されています。
まず、24年度改定における福祉用具貸与・特定福祉用具販売の改定項目をそれぞれ確認しましょう。
福祉用具貸与に関わる改定項目は以下の通りです。(★は介護予防を含むもの)
特定福祉用具販売に関わる改定項目は以下の通りです。(★は介護予防を含むもの)
両サービスの改定項目にある「福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会を踏まえた対応」(福祉用具にまつわる事故等の公表、福祉用具専門相談員指定講習カリキュラムの見直しなど)は主に行政向けの改定項目ですので、以降はそれ以外の事業者向けの改定項目について抜粋します。
感染症もしくは災害のいずれか、または両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬が減算となります。
なお、福祉用具貸与(介護予防福祉用具貸与)は、 訪問系サービスや居宅介護支援同様に2025年3月31日までの間、減算が適用されません。
業務継続計画未実施減算が適用されるのは以下の場合です。
※ 2025(令和7)年3月31日までの間、「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」の整備及び「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合は減算適用になりません。
虐待の発生や再発防止措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者の選定)が講じられていない場合、基本報酬が減算となります。
なお、福祉用具貸与(介護予防福祉用具貸与)については、3年間の経過措置期間が設けられています。
高齢者虐待防止措置未実施減算は、事業所において高齢者虐待が発生した場合ではなく、「虐待の発生または再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合」に利用者全員に対して適用されます。講じるべき措置とは以下の通りです。
これらに違反していた場合は速やかに改善計画を都道府県知事に提出した後、違反があった月から3カ月後に改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告しなければなりません。また、違反の事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間について、利用者全員について所定単位数から減算されます。
※このほかの改正事項として介護サービス情報公表システムに登録すべき事項に虐待防止に関する取組状況が追加されます。
身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、福祉用具貸与・特定福祉用具販売では、以下が義務化されます。
一部の福祉用具について、貸与と販売の選択制が導入されます。
選択制の対象となる福祉用具の種目・種類は、「要介護度に関係なく給付が可能な福祉用具のうち、比較的廉価で、購入した方が利用者の負担が抑えられる者の割合が相対的に高い」という考え方に基づき、以下の4種目となります。
貸与と販売の選択制の導入に伴い、以下の対応が必要になります。
選択制の対象となる福祉用具の提供に当たり、福祉用具専門相談員または介護支援専門員は、利用者に対し、以下の対応を実施する。
※なお、提案に当たっては、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士からのいずれかの意見を介護支援専門員等と連携するなどの方法により聴取するものとするが、利用者の安全の確保や自立を支援する必要性から遅滞なくサービス提供を行う必要があるなど、やむを得ない事情がある場合は、この限りではない(「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」より)。
※検討に当たっては、 リハビリテーション会議またはサービス担当者会議といった多職種が協議する場を活用するほか、関係者への聴取による方法も考えられる。なお、やむを得ない事情により利用開始時から6カ月以内にモニタリングを実施できなかった場合は、実施が可能となった時点で可能な限り速やかにモニタリングを実施するものとする
福祉用具貸与のモニタリングを適切に実施し、サービスの質の向上を図るため、福祉用具貸与計画の記載事項に「モニタリングの実施時期」が追加されます。
福祉用具専門相談員が、モニタリングの結果を記録し、その記録を介護支援専門員に交付することが義務付けられます。
福祉用具専門相談員は、モニタリングの結果を記録し、当該記録をサービスの提供に係る居宅サービス計画を作成した指定居宅介護支援事業者に報告しなければならない。
福祉用具専門相談員は、モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて当該福祉用具貸与計画の変更を行うものとする。
人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークについて共通しているのは
を前提とするということです。
その上で、3月29日発出の通知「介護サービス事業所・施設等における 情報通信機器を活用した業務の実施に関する留意事項について」によると、福祉用具専門相談員のテレワークについては以下の考え方が示されました(太字は編集部による強調)。
上記の算定対象地域に、「過疎地域」として過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法の規定を適用することとされている地域等が含まれることが明確化されます。
※1:①離島振興対策実施地域、②奄美群島、③振興山村、④小笠原諸島、⑤沖縄の離島、⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等であって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域
※2:①豪雪地帯及び特別豪雪地帯、②辺地、③半島振興対策実施地域、④特定農山村、⑤過疎地域
※3:①離島振興対策実施地域、②奄美群島、③豪雪地帯及び特別豪雪地帯、④辺地、⑤振興山村、⑥小笠原諸島、⑦半島振興対策実施地域、⑧特定農山村地域、⑨過疎地域、⑩沖縄の離島
また、厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年厚生労働省告示第83号)及び厚生労働大臣が定める地域(平成24年厚生労働省告示第120号)の規定が改正されます(下線部)。
過疎地域やその他の地域で、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難であると認められる地域であって、特別地域加算の対象として告示で定めるものについて、前回の改正以降、新たに加除する必要が生じた地域は、都道府県・市町村から加除の必要性等を聴取した上で、見直しが行われます。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。