2024年度の介護保険制度改正で、高齢者の負担拡大が現実味を帯びています。また、社会保障全体の給付対象と負担の仕組みを抜本から見直そうという機運も高まっているところです。12月20日には介護保険制度を巡る「給付と負担」の見直しについて、改めて現状の課題整理が行われたところです。
この話題に関連して、健康保険組合連合会(以下、健保連)から利用者層を含む国民の負担感を示す調査結果が公表されました。利用者層が一定の自己負担を許容しているとも読み取れるデータが公的に共有されていることは、留意しておくべきといえそうです。
この調査は、健保連が公的医療・介護保険制度や医療提供体制に対する国民の認識やニーズを広く把握するために実施したものです。社会保障審議会・介護給付費分科会でも議論の材料になりました。22年7月にwebアンケートが行われ、全国から3,000人が回答しています。
利用者層を含む国民の負担感を示す調査結果のうち、次期介護保険制度改正やその先に向けた課題について、状況を整理しておきましょう。
社保審・介護保険部会による「介護保険制度の見直しに関する意見」(12月20日取りまとめ)では、2割負担の対象範囲の拡大(一定以上所得」の判断基準の見直し)について、24年度の改正までに結論づけるべきものとしています。
特に一部の事業者団体などが事業への影響を懸念している項目です。また、高所得者層の1号保険料は、引き上げられる方向性が示されています。
健保連による調査結果では、高齢世代を含めた全年代で「高齢世帯の負担が重くなることはやむを得ない」とする回答が計42.3%と最多となりました。
【画像】健康保険組合連合会「医療・介護に関する国民意識調査(速報版)」より(以下同様)
被保険者1人当たり月額6,000円/人である介護保険料の負担の重さについて、「非常に重いと感じる」「やや重いと感じる」との回答は計57.6%と、過半数を占めました(21年度時点)。
これに対し、介護保険サービスの自己負担について「非常に高いと感じる」「やや高いと感じる」との回答した割合は計35.6%と4割以下に留まります。
介護保険サービスの自己負担の負担感が「介護保険料の負担感を下回りました。24年度改正に向けて2割負担の対象拡大が行われるかどうかはまだ結論が出ていませんが、拡大すべきとする保険者の主張の一部はこうしたデータにも依拠しています。
増加の一途をたどる社会保障費のうちの介護費を補填する方法については、「介護サービスを利用したときの利用者の自己負担を増やすのがよい」との回答が24.3%と、「税金の引き上げまたは新設」や「高齢者の保険料引き上げ」を抑え、最も多くなっています(単一回答。「わからない」回答を除く)。
年代別でみると、「介護サービス利用者の自己負担増」と回答した割合は70代以上で34.5%、60代で27.5%。実際に介護サービスを利用する高齢世帯ほど、介護費の補填方法としてサービス利用に対する自己負担増加を選択する結果となりました。
高齢世帯の負担拡大を検討することについて、一部からはサービスの利用控えにつながるなど懸念の声も上がっています。
一方で今回のデータのように、高齢世帯が一定の自己負担増を容認していると読み取れるものが示されているのも事実です。
「給付と負担の見直し」を巡る検討は、24年移行も議論が深化していくでしょう。介護経営ドットコムでは今後も、次期介護保険制度やその先の動向に関わる情報を紹介してまいります。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。