事業所間の連絡や利用者に関する記録など、介護現場を圧迫している書類の作成。
手書き書類の転記作業やFAXでのやり取りを減らせれば、業務の効率化が進みます。
しかし、有料ツールの導入には、コスト面でのハードルを感じる事業所も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、無料で使える「Googleフォーム」の基本的な使い方と、介護サービスの利用申し込みやサービス担当者会議の照会といった、介護現場での活用アイデアをご紹介します。
ICTツールを取り入れて業務や働き方の制約を減らそう
はじめまして。私は都内の独立型居宅介護支援事業所で、一人ケアマネとして活動しています。また、「ヒトケア」の名称でNPO法人タダカヨの講師もしており、介護現場で役立つICTツールの活用方法を紹介しています。
2012年からケアマネジャーとして現場に携わる中で、業務負担の軽減や多職種とのスムーズな連携には、ICTツールの活用が欠かせないと実感してきました。
今回紹介するGoogleフォームの活用は、どのようなサービス種別でも活用できるうえ、働き方の自由度を高める手段としてもお薦めの方法です。
Googleフォームとは
Googleフォームは、Googleが提供する無料のオンラインフォーム作成ツールです。
アンケートや問い合わせフォーム、イベントの申し込みなど、さまざまな用途に活用できます。
Googleアカウントがあれば、誰でも無料でフォームを作成でき、作成したフォームはパソコン・タブレット・スマートフォンから簡単に編集や管理が可能です。
また、Googleアカウントがなくても回答できるため、幅広い人に利用してもらいやすいことも特徴です。
Googleフォームの使い方~基本の6ステップ
Googleフォームは直感的に操作でき、初心者の方でも簡単にフォームを作成できます。
ここでは、基本的な作成手順を6つのステップに分けて解説します。
①Googleフォームにアクセス
Googleフォームのホーム画面にアクセスします。
Googleアカウントにログインすると、新しいフォームを作成できる画面が表示されます。
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(画像引用:Googleフォームのホーム画面)
②タイトル・説明文を入力
Googleフォームを開いたら、まずタイトル(画像内の①)と説明文(画像内の②)を入力します。
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(画像引用:Googleフォームでタイトルと説明文を入力する画面)
タイトルはフォームの目的が一目で分かるように設定し、説明文には回答者が迷わず入力できるよう、必要な情報や注意点を記載しましょう。
③質問と選択肢を作成
フォームのタイトルと説明文を入力したら、次に質問項目を作成します。Googleフォームでは、回答形式を自由に選択できるため用途に応じた適切な質問形式を設定しましょう。
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(画像引用:Googleフォームで質問の回答形式を選択する画面)
| 質問形式 | 説明 |
| 記述式(短文) | 短い回答を収集するための形式。名前や簡単な情報入力向け。 |
| 段落 | 長文回答を収集するための形式。詳細な説明や意見などを入力できる。 |
| ラジオボタン | 複数の選択肢から1つだけ選択する形式。シンプルな単一選択用。 |
| チェックボックス | 複数の選択肢から複数を選択可能な形式。複数回答が必要な場合に使用。 |
| プルダウン | ドロップダウンメニューから1つの選択肢を選ぶ形式。コンパクトで見やすい。 |
| ファイルのアップロード | 回答者がファイル(画像、文書など)をアップロードできる形式。 |
| 均等目盛 | 数値スケールで評価する形式(例:1〜5など)。意見や満足度を測定する際に便利。 |
| 評価 | 星型アイコンで評価する形式。直感的に満足度や評価を示すことが可能。 |
| 選択式(グリッド) | 行と列の組み合わせで複数の質問に対して単一回答を求める形式。 |
| チェックボックス(グリッド) | 行と列の組み合わせで複数の質問に対して複数回答を求める形式。 |
| 日付 | 日付入力用の形式(例:イベントの日付)。 |
| 時刻 | 時間入力用の形式(例:開始時間や終了時間)。 |
④プレビューで確認
フォームの作成が完了したら、公開前にプレビュー機能を使って最終確認を行いましょう。
画面右上の「目のアイコン(プレビュー)」をクリックすると、新しいタブで回答者と同じ画面が表示されます。
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(画像引用:Googleフォームのプレビュー機能を使用して確認する画面)
⑤フォームを公開する
Googleフォームの作成が完了し、プレビューで内容を確認したら、次はフォームを公開して回答を収集できる状態にします。
【1. 公開ボタンをクリック】
画面右上にある「公開」ボタンをクリックします。
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(画像引用:Googleフォームの公開ボタンをクリックする画面)
【2. 公開範囲を設定】
フォームの公開時に、誰が回答できるかのアクセス範囲を設定します。
①公開範囲の管理画面を開く
「フォームの公開」画面で、「管理」ボタンをクリックします(画像①)。
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(画像引用:Googleフォームの「フォームの公開」の画面)
②回答者のアクセス範囲を選択
「回答者ビュー」の横にある「▼」ボタンをクリックします(画像②)。
アクセス範囲を選択します(画像③)。
- 制限付き:特定のユーザーのみ回答可能
- リンクを知っている全員:URLを知っている人は誰でも回答可能
設定が完了したら、「完了」ボタンをクリックします(画像④)。
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(画像引用:Googleフォームの公開範囲を設定する画面)
【3. フォームを公開する】
公開範囲の設定が完了したら、フォームを公開して回答を受け付けられるようにします(画像⑤)。
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(画像引用:Googleフォームの「フォームの公開」の画面)
これでフォームが公開され、設定した範囲のユーザーが回答できるようになります。
⑥ フォームを送信する
フォームを公開したら、回答者に共有して入力を依頼しましょう。
Googleフォームでは、リンクをコピーして共有する方法が便利です。
- 画面右上の「公開」ボタンをクリックします(画像①)。
- 「回答者へのリンクをコピー」をクリックします。(画像②)。
- メールやチャット、ショートメール等でリンクを送信します。
- 居宅介護支援事業所の情報(事業所名、担当ケアマネジャー等)
- 利用者に関する情報(氏名、生年月日、要介護、健康状態、ADL等)
- 利用希望日(チェックボックスから複数選択可にできます)
- 入浴希望の有無(単一選択にしましょう)
- 利用開始希望日(日付から選択できるようにしましょう)
- サービス事業所の情報(事業所名、氏名)
- サービスの実施状況(予定通り実施、予定が守られなかった)
- 身体機能について(改善している、変化していない、悪化している)
- 認知・精神機能について(改善している、変化していない、悪化している)
- 居宅サービス計画書の内容変更について(必要性を感じる、必要性を感じない)
- 上記回答に対する意見、提案等(記述式にする)
- モニタリング実施日
- 利用者の状態(身体機能、認知機能、健康状態等)
- 家族の状況(利用者との関係、介護負担等)
- 短期目標の達成状況
- モニタリングの総括
- 再アセスメントの必要性
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(画像引用:Googleフォームのリンクをコピーする画面)
介護現場におけるGoogleフォーム活用法
ここまでGoogleフォームの基本的な活用についてご紹介しました。
介護現場では、情報共有や記録管理に活用することで、紙の書類やFAXのやり取りを減らすことができます。フォームで集めた回答は一元管理できるため、情報の取り扱いも便利になります。
具体的な方法として、Googleフォームを活用した「サービス利用申込み」「サービス担当者会議の照会依頼」「モニタリング記録」の3つをご紹介します。
ぜひ、ご自身の事業所でも取り入れてみてください。
①サービス利用申込み
まず、ご紹介するのは、介護サービス事業所がケアマネジャーからの新規利用申込みをスムーズに受け付ける方法です。
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(画像引用:Googleフォームを利用したデイサービス利用申込フォーム)
「デイサービス利用申込フォーム」の場合、以下の回答項目が考えられます。
②サービス担当者会議の照会依頼
Googleフォームを利用したサービス担当者会議の照会依頼も簡単なうえ、メリットが大きく、お薦めの方法です。
この方法を使えば、ケアマネジャーはメールやチャットを使って簡単に照会フォームを送信でき、回答結果の管理も楽になります。
また、サービス事業所側も、外出中のスキマ時間にスマートフォンから手軽に回答を送信できるため、事務所に戻って照会用紙に記入するという手間が解消されます。
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(画像引用:Googleフォームを利用した照会フォーム)
「サービス担当者会議の照会フォーム」には、以下の項目が考えられます。
なお、注意点として、フォームのタイトルや説明文、質問項目に利用者のフルネームは記載せず、イニシャル表記にするか、利用者名は事業所側にフォーム内で入力してもらう形式にしましょう。
③モニタリング記録
毎月のモニタリング記録をGoogleフォームに入力することで、記録の一元管理と業務の効率化が可能になります。
このフォームは、ケアマネジャーのみがアクセスできるよう、フォームの「回答者ビュー」を制限付きに設定し、一人の利用者のモニタリング記録を同じフォームで更新していくことで、データを一箇所にまとめられます。
過去の記録と比較しやすく、長期的な変化の把握も容易になるという点からもお薦めの方法です。
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(画像引用:Googleフォームを利用したモニタリング入力フォーム)
「モニタリング記録フォーム」は、以下の項目が考えられます。
個人情報の流出を防ぐために注意すべき設定
ここまでお伝えしたとおり、Googleフォームは様々な用途で活用できる便利なツールです。しかし、設定を誤ると個人情報が流出するリスクも潜んでいます。そこで最後に、個人情報の流出を防ぐために、特に注意すべき3つの設定について解説します。
①「結果の概要を表示する」をOFFにする
Googleフォームの「設定」タブにある「結果の概要を表示する」オプションは、必ずOFFのままにしてください。
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(画像引用:Googleフォームの「結果の概要を表示する」設定をOFFにする画面)
この設定がONになっていると、回答者がフォームにアクセスした際に、個人情報などを含んだ他の回答者の回答内容を閲覧できてしまう可能性があります。
②「編集者ビュー」を「制限付き」にする
共有設定の「編集者ビュー」は、「制限付き」のままにしてください。
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(画像引用:「編集者ビュー」を制限付きにする設定画面)
この設定を「リンクを知っている全員」に変更すると、第三者が編集用の画面から回答内容を閲覧できるため、個人情報の漏えいリスクが高まります。
特定の人と編集を共有する場合、「制限付き」の設定を維持したまま、編集権限を付与したい人のメールアドレスを追加しましょう。
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Googleスプレッドシートの共有を「制限付き」にする
Googleフォームで収集した回答データは、Googleスプレッドシートに自動的に保存されます。
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(画像引用:Googleフォームの回答をスプレッドシートで表示する画面)
このスプレッドシート内の共有設定は「非公開」(制限付き)のままにしてください。
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(画像引用:Googleスプレッドシートの共有設定の「制限付き」を確認する画面)
この設定を「リンクを知っている全員」にすると、共有リンクを知っている人なら誰でも回答内容を閲覧できる状態になってしまいます。
上記の3つ(「結果の概要を表示する」「編集者ビュー」「Googleスプレッドシートの共有」)は、初期設定ではOFFや制限付きとなっています。 しかし、誤操作や共有時の設定変更により、個人情報が意図せず公開されるリスクもあるため、定期的に設定を確認し、安全な運用を心がけましょう。
今回で、タダカヨメンバーによる介護現場の業務効率化を進めるためのツール紹介は最終回です。
これまでの記事は、こちらからお読みいただけます。
気になるものには目を通して、是非業務に取り入れてみてください。