2027年度に控える介護保険制度や関連する法律などの改正に向けて、厚生労働省を中心に課題の洗い出しが進められています。
現在、主要テーマの一つとされているのが、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方」についてです。
入居者に対する”囲い込み”を巡っては、系列企業などの外付けサービスの利用を前提としたビジネスモデルの問題点が指摘されています。
このほか、有料老人ホームの紹介事業や住宅型有料老人ホームの人員配置等も議題に上がっています。
現時点で規制強化が検討されている項目を中心に、これまでの議論・検討の状況をお伝えします。
2025年4月に、厚労省は「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方検討会」を設置しました。
入居者に対して過剰なサービスを提供する”囲い込み”の事例や、有料老人ホームの紹介において相談者に高額な手数料を請求している事例など、一部事業者によるサービスの実態が問題視されていることを受けたものです。
以下に、厚労省が検討会の議題として示した切り口とトピックを整理しました。
現在、これらに関連する規制やルールの在り方等について、検討会としての合意形成が進められているところです。
夏頃には検討会として一定の整理が行われる予定ですので、関係者はその内容や表現に注意を払う必要がありそうです。
なお、このほかにも有料老人ホームの定義を実態に合わせたものとするための見直しや、自治体の介護保険事業(支援)計画に有料老人ホームの供給量を反映させるための仕組みなどが検討範囲となっています。
(*参考:第1回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 資料3「有料老人ホームの現状と課題・論点について」より。表現は編集部で調整)
同検討会では5月末までに、厚労省が示した論点に沿った意見交換の後、関係者からのヒアリングを実施しています。
ヒアリングでは、高齢者の住まい運営に関わる事業者団体や紹介事業者の代表者、自治体などがそれぞれの立場などを説明しました。
(【画像】:第1回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会資料3より。検討会の進め方)
”囲い込み”の問題や、紹介業者の運営については、一部の構成員から具体的な対応策が提案されています。
住宅型有老やサ高住などの入居者に対する介護サービスの提供についてはこれまでのところ、「利用が特定の事業所に集中することそのものや、適切なケアプランに基づいて支給限度額まで利用することそのものを否定することは、なかなかできない」(第1回・日本社会事業大の井上由起子構成員)、「過度な規制がかかり、民間施設全体としての創意工夫や効率性を削ぐことのないよう、囲い込みの定義も含め、慎重な検討を」(第1回・シルバーサービス振興会の久留参考人)といった意見が少なくありません。
一方で、入居者に併設事業所のサービスを使ってもらうことを前提としたビジネスモデルは、過剰なサービス提供につながりやすく、自治体の指導も届きにくい面があることから、
といった提案もありました。
(【画像】:第1回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会資料3より、住宅型有料老人ホーム等における入居要件の実態)
有料老人ホームの紹介事業については、「(法的な規制によって免許の交付や報酬に関する規定のある)不動産の宅地建物取引業との整理が必要」(第2回・井上構成員)などといった指摘がありました。
また、ケアマネジャーの立場からは「住宅型有料老人ホーム等への入居契約は、利用者様だけでなく、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所の介護支援専門員にとっても難解な場合が多くある」「(紹介事業者を)届出や登録制にするなどの対応が必要ではないか」という意見もありました(第1回・日本介護支援専門員協会の濱田和則構成員)。
紹介事業者を代表してヒアリングに出席したメンバー(株式会社ソナエルの田中宏信取締役、東京ロイヤル株式会社の嘉門桂介統括執行役員)も、
責任の範囲については「かなり議論は必要」などとしつつも、有料老人ホームの紹介業に届出や免許のような規制の整備が必要という論調に反対はしていません。
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