ケアマネの窃盗行為・金銭トラブルを防ぐために事業所が備えておくべきポイントとは?―弁護士による解説

2025.06.24
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2023年8月3日、新潟県でケアマネジャーが利用者宅を訪問した際に財布から現金2万1,000円を盗んだとして逮捕される事件がありました。 また2024年1月には、熊本県で元ケアマネジャーが利用者のキャッシュカードを不正に使用し、ATMから現金130万円を引き出したとして逮捕される事案も発生しています。 事件化されるのはごく一部に過ぎず、発覚していないケースもある可能性があります。

また、大多数の誠実に業務を行っているケアマネジャーにとっても、社会的な信頼が損なわれかねない問題です。

こうした事態を未然に防ぐためにも、事業所としての基本的なリスク管理や予防的な取り組みが重要です。

本記事では、ケアマネによる金銭トラブルを防止するために、事業所が意識しておくべきポイントを整理してご紹介します。

※動画でも同様の内容を解説しています。こちらからご覧ください。

1.預かり行為はしない

ケアマネと利用者は信頼関係で結ばれていますので、日常的な付き合いの延長で金銭の預かりを依頼されることがあります。ですが、その預かり行為がきっかけとなり、利用者や家族から「ケアマネがお金を盗った」という疑いをかけられてしまうケースに発展する可能性があります。

利用者の身元引受人がいる場合は、その人に金銭管理をしてもらうことが現実的でしょう。

また、利用者に意思能力がある場合は、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の利用を促すことが大切です。
利用者に意思能力が無い場合は、後見制度を活用するようにしてください。

2.訪問時は透明のバッグを用いるようにする

ケアマネが利用者宅を訪問する際は、外から中身が見える透明のバッグを用いるようにしましょう。これで完全に窃盗を防げる訳ではありませんが、職員に対する意識付けの一環としては意味を持ちます。

3.サービス提供する部屋以外には立ち入らないというルールを設ける

事業所としては、サービス提供する部屋以外にはケアマネは立ち入らないというルールを設け、職員と利用者・家族に周知徹底するようにしましょう。

4.貴重品に関する管理ルールを設け、利用者・ご家族に守ってもらう

窃盗の被害品は、多くの場合、簡単に持ち運びができる現金やキャッシュカードや貴金属類です。そこで、利用者やご家族の協力が必要ですが、サービス提供する部屋の中には、貴重品は置かないこと、また貴重品ついては金庫で管理していただくことをお願いしてもらいましょう。

5.事業所内でコンプライアンス研修を実施する

人間は本質的に弱い生き物です。人の物を盗ってはいけない、ということは幼少期から学ぶ社会における重要基本ルールの一つです。

しかし、例えば、経済的にうまくいっていないときに、目の前に利用者の財布が置いてあり、ついつい手が伸びてしまった、とか、これだけ一生懸命働いているのだからちょっとくらいは良いだろう、といったような悪魔の囁きに負けてしまい、犯罪に手を染めてしまうことがあります。

事業所としても、最初に雇う段階で窃盗する人かどうか見抜くことができれば良いのですが、残念ながら採用時にすべてを見抜くことは不可能です。

だからこそ、コンプライアンス研修が大切です。

窃盗行為は重大な犯罪であること、犯罪行為はいつか発覚し、身の破滅を招くこと、発覚した時に逮捕されたり、報道で顔・名前が公のもとに晒されたり、積み上げてきた人生そのものが崩壊してしまうおそれがあること等、定期的に学ぶ機会を設けることが望ましいです。

6.利用者の物盗られ妄想への対処法

物盗られ妄想とは、認知症等で見られる被害妄想の一種で、自分の財産が盗られたと強く思い込む症状です。

本人は「盗られた」と本気で思いこんでおられるので、頭ごなしに否定しても利用者が感情的になるだけで解決の方向に向かいません。

また、利用者の話をご家族が信用している場合、ご家族から事業所に連絡が入る場合があります。 「物盗られ妄想ですよ」と一言で片づけるのではなく、一つの事案としてきちんと調査対応し、誠実に向き合うことが大切です。

なお、『認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ』という書籍 では、認知症利用者の世界観に一緒に入って、話を合わせるというケア技術についても紹介されており、大変参考になります。是非、読んでみてください。

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