こんにちは、吉崎ちほと申します。大阪府枚方市の社会福祉法人が運営する居宅介護支援事業所で主任介護支援専門員として従事しています。その傍ら、大阪府の法定研修でのファシリテーターや一般社団法人枚方市介護支援専門員連絡協議会の事務局長に就き、地域の介護支援専門員の資質向上を支援し、地域福祉の充実を目指しています。
今回は、「お金のかからないIT」を普及させる活動に取り組むNPO法人タダカヨの一員として、AIを活用した情報整理ツール「NotebookLM」をご紹介させていただきます。
介護業界に溢れる膨大なマニュアルや行政資料から必要な情報を簡単に取り出すことができ、大幅な業務効率化と専門性の向上に寄与してくれるツールです。
NotebookLM(ノートブックエルエム)は、Googleが提供するノートブック形式のAIツールです。ユーザーがアップロードしたドキュメントの内容をAI技術で整理・分類・管理し、効率的に情報検索したり要約することができます。
また、ユーザーがアップロードしたドキュメントや資料だけをデータソースとして使用するため、AIによる誤情報生成(ハルシネーション)を大幅に抑制できるのが特徴です。
さらに、多くの生成AI同様に、チャット形式で指示を出すだけで作業が完結するため、直感的に操作でき、特別なスキルが不要である点も便利です。
NotebookLMの主要機能は、大きく分けて以下の4つに分けられます。
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:ファイルをアップロードする画面の例)
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:アップロードししたデータをAIが要約している画面の例)
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:チャットにて質問、回答を受けている画面の例)
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:ノートブックを作成、表示させた画面の例)
NotebookLMでは、以下の情報(ソース)をサポートしています。
各ソースの上限は最大50万語、ファイルサイズは200MBまで。1つのノートブックには最大50個のソースを含めることができます。
ここからは、実際の業務(今回は、居宅介護支援事業所)での具体的な活用例を紹介します。
まず、昨年度より法定研修の研修カリキュラムにも組み込まれた「適切なケアマネジメント手法」を用いた活用事例を紹介します。
「適切なケアマネジメント手法」とは、要介護状態にある高齢者一人ひとりの状況やニーズに合わせた、より質の高いケアを提供するために、介護支援専門員の先達たちが培ってきた知見に基づく支援の手法を体系化して整理したものです。厚生労働省は2021年に「適切なケアマネジメント手法の手引き」を公表しており、ケアマネジャーの知識やスキルを向上させることで、より質の高いケアマネジメントが実現することを目指しています。
この「適切なケアマネジメント手法」をソースとして、Notebookを作成してみます。
(解説に当たっては、日本総研のホームページから、概要版(項目一覧)をダウンロードしてソースとして活用しています。)
「適切なケアマネジメント手法」をNotebookLMに情報ソースとしてアップロードした後で、例えば、インテークで得た利用者についての簡単な情報を入力すると、アセスメントなどの各プロセスにおいてに確認すべき項目を「適切なケアマネジメント手法」の内容に照らして提案してくれます。
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:適切なケアマネジメント手法をソースとして、さらにソースを選択しての質問に対してAIが回答している画面の例)
さらに、退院前カンファレンスへ参加するにあたり、どの専門職とどんな連携を図るべきかを質問すると、専門職の職種(医師、看護師、理学療法士等)ごとに、伝えるべき情報を提案してくれます。
介護支援専門員が作成したアセスメントや居宅サービス計画書などをソースとして追加することで、自身のアセスメントの振り返りや居宅サービス計画の抜け漏れ確認などにも活用できます。
次に、運営基準を確認する際にNotebookLM活用する方法を紹介します。
厚労省から発出されている運営基準解釈通知や、運営指導マニュアルなどをソースとしてアップロードすることで、膨大な資料の中から、必要な情報を簡単に探すことができるようになります。
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:運営基準解釈通知などをソースとして、サービスの実施要件について質問、AIが回答している画面の例)
例えば、資料をアップロードしたのち、昨年より実施可能となった「オンラインモニタリングの実施要件」について尋ねてみたところ、”オンラインモニタリングの実施要件は、厚労省が発行している「運営基準解釈通知(居宅介護支援)に記されています”という情報ソースの紹介から回答が始まり、以下の情報が得られました。
以下の条件を全て満たす場合には、 利用者の居宅を訪問しない月において、テレビ電話装置等を活用して利用者に面接を行うことができます。
テレビ電話装置等を活用して面接を行う場合は、以下の点に留意する必要があります。
利用者の状況に変化が認められた場合等は、 居宅を訪問することによる面接に切り替えることが適切です。
NotebookLMの回答には、ソースの参照元にリンクが示されており、ソースの原文も簡単に確認できるのも特徴です。
最後に、各種会議等での活用についてです。
私が務めている居宅介護支援事業所は、特定事業所加算を算定しているため、算定要件として、週1回の事業所内会議(以下居宅会議)を開催しています。その際の、会議録をNotebookLMで作成しています。
会議の資料、会議の音声(録音データ)をソースとしてアップロードすることで、会議の議事録があっという間に作成できます。
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:音声ファイル(mp3)をソースとしてアップロードすることで、概要の要約、文字起こしが行われている画面の例)
他のAIツールでは、音声データ(mp3等)を直接アップロードできるものは少ないのですが、NotebookLMでは、音声データをそのままアップロード可能です。
アップロードした音声データを、文字起こしして、さらに概要をまとめてくれています。
(画像引用:Google NotebookLMを使用して筆者が取得:筆者が参加した会議の音声データ(mp3)をソースとしてアップロードし、AIが議事録を作成していくれている画面の例)
議事録作成をお願いすると、議題、今後のスケジュール、その他、決定事項、備考、といった項目で議事録を作成してくれました。
作成された議事録は「メモに保存」したり「ソースに変換」することが可能なため、別のアプリを使用することなく、議事録の管理も可能となります。
また、各種委員会の会議の資料についても、事業所独自のマニュアルやガイドラインをソースとして活用することで、個別性の高い資料が作れます。
先日は、BCP(事業持続計画)をもとに、自然災害発生時に机上訓練のシナリオも作成し、実際に机上訓練を実施しました。
今回は、Googleが開発したAIノートブック「NotebookLM」に注目し、居宅介護支援事業所における活用例をご紹介させていただきました。
NotebookLMは、ユーザーがアップロードした資料を基に学習し、その内容に特化した回答を行うAIツールです。介護保険制度に関する資料、ガイドライン、マニュアルなどをアップロードすることで、「介護の専門家」のようなパートナーを得ることができます。
情報収集にかかる時間を大幅に削減し、業務効率化に貢献してくれる、まさに”あなただけの情報源”となり、ご自身の専門性を高めることができます。
AIをはじめとしたテクノロジーは、介護業界の未来を明るく照らす、強力なツールとなる可能性を秘めているのです。
ITを上手に使って、お金をかけずにより良い介護へ」をVisionに掲げ、介護事業所に無料/低コストのITツールの普及活動を行っている非営利団体。所属メンバーの多くは、社会福祉法人や医療法人で勤務しており、本業の合間を縫ってタダカヨの非営利活動に励んでいる。介護従事者のための無料オンラインPCスクール「タダスク」、高齢者施設向け無料オンラインレク「タダレク」などを主催。