内閣府の資料によると、首都直下型地震では、最大震度が7となる地域があるほか、広い地域で震度6強から6弱の強い揺れになると想定されている。最大で死者が約2.3万人、建物の全壊及び焼失棟数が約61万棟、経済被害は、建物等の直接被害だけで約47兆円である。南海トラフ地震では、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されている。関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されている。最大で死者が約32.3万人、建物の全壊及び焼失棟数が約238.6万棟と想定されている。被災地の経済被害は最大で約169.5兆円である。
介護事業者に災害時における業務継続への取り組みが求められているのも必然といえる。
BCPとは、地震や台風などの自然災害やコロナのような感染症によって、電力・ガス・水道・インターネット等のインフラ環境や介護施設・事業所の設備が損傷することになり、出勤出来る職員が不足しても、早期に介護サービスを再開ができるように、事前に被災時の対策をまとめた計画書やマニュアルを指す。
ただし、介護・福祉のBCP作成には独特の手順が必要になる。2021年度の介護報酬改定でのBCP策定義務化に伴い、厚生労働省は独自の様式を示している。
この様式に沿ってBCPを作成する場合、介護事業の諸法令や基準、Q&A、特に災害時の制度上の特例措置に、ある程度精通していることが求められる。感染症対策下でのサービスの継続など一般企業には無い要素も多く盛り込む。通所サービスに至っては、休業という要素を盛り込まないといけない。
さらに、惨事ストレス対策などのメンタルケアの要素も必要になるために、介護事業のBCP策定のハードルはかなり高く、インターネット等から得た手軽な作成事例をコピペして作成出来るものではない。地域や施設によって自然災害や感染症のリスクは異なるし、併設している介護サービスも違う。介護サービスに対する基本的な考え方(基本理念、クレドなど)も各々の介護事業所で異なる。そのため、事業者毎にオーダーメイドでの作成が求められる。
また、BCPは管理者が一人で作り込むものではないという認識が必要だ。BCPの策定は、現状の仕組みや運営手順を計画のフォーマットに落としこめば済むものではなく、施設や事業所の現状の問題点を把握して、その解決策を皆で検討しながらBCPを作り込んでいくものだからである。
BCP作成の全体像を理解するために、中小企業庁のBCPで取り入れられている事業継続マネジメント(BCM)の考え方が参考にできる。
全体像やゴールを把握し、メンバー間で共有できていないままBCPの作成を進めると、途中で道に迷ってしまい、策定に膨大な時間がかかるだけでなく結果的に挫折するケースが多いようである。
このマネジメントサイクルをしっかりと共有してから作成をスタートしよう。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。