誤解の多い「虐待」~高齢者虐待防止法(※)を正しく理解しよう~

2021.08.17
2021.08.20
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(※)高齢者虐待防止法の正式名称は、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」です。本稿では、便宜上「高齢者虐待防止法」という略称を用いております。

目次
    1.「虐待」と聞くと何をイメージしますか?
      2.「刑法」と「高齢者虐待防止法」の違い
        3.介護事業者が「高齢者虐待防止」に向けて実践すべきこと

        1.「虐待」と聞くと何をイメージしますか?

        とある特別養護老人ホームでの出来事。
        花子(仮名)は80歳、要介護5で寝たきりであり、全面的な介助が必要な利用者であった。

        ある朝、看護師の職員が出勤し、花子の様子を見にいったところ、花子の顔面が大きく腫れあがった状態で発見された。
        一体何があったのか。

        当時、夜勤を担当していたのは1名の介護職員。

        花子は、発見当時、顔面が腫れ上がった状態でベッドに仰向けになっていた。
        この事態に驚いた看護師は、急いで救急車を手配した。

        搬送先の医師は、花子の顔面の怪我の状態を診察したが、その他にも体に多数の痣があることを発見した。
        MRIを実施すると、慢性硬膜下血腫であることも判明。
        医師はこれらの所見を踏まえ、虐待の可能性があると判断し、行政に通報。
        何故このような事態が発生したのか、介護施設で調査を開始した。

        当然のことながら、夜勤を担当していた介護職員が何らかの関与をしていると思われたので、詳しくヒアリングした。
        結果、介護職員が不適切なケアをしたことから介護事故が発生したことが判明した。

        花子は寝たきりで、ひとりで端坐位を維持する事が困難であったにも関わらず、夜勤担当の職員が朝6時頃、ベッドに座らせ、数十秒、その場を離れたというのだ。
        円背で端坐位ができないことから、前のめりに倒れてしまい、そのまま花子は床に顔面を打ち付けたと考えられる。

        さらに、このヒアリングの中で、かねてからの人出不足で、花子を介助する際、複数の職員で対応しなければならないところ、1名のスタッフでケアすることが常態化しており、それが原因で、体をベッド柵に打ち付けたり、頭をぶつけたりしてしまうことが頻繁に生じていたことも併せて発覚した。

        介護施設側は、重大な過失があると考え、すぐにご家族に謝罪対応し、不適切なケアをしたことを謝罪した。

        しかしながら、この事故から3カ月後、行政から、この事故は、高齢者虐待防止法の「身体的虐待」「介護・世話の放棄・放任」に該当すると伝達され、調査が入ることになった。

        介護施設としては、夜勤の介護職員は確かに不適切な介護を行ったものの、わざと花子の顔面を殴打した訳では無い。また、関わった他の職員もわざと暴行を加えたことは無く、人出不足が原因で、結果として満足なケアができず、花子の体に痣ができたり、頭をぶつけてしまったりしたのだ。

        何故これが「身体的虐待」「介護・世話の放棄・放任」と言われるのか、行政の判断に納得がいかない。この調査は受けるべきなのか、それとも徹底的に抗議すべきなのだろうか。果たして、この介護事故は「身体的虐待」「介護・世話の放棄・放任」に該当するのだろうか。

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