2024年度介護保険制度改正や介護報酬改定でも、居宅介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割の拡張がますます促されていきそうです。社会保障審議会・介護保険部会では、厚生労働省が「ケアマネジメントの質の向上」を巡ってケアマネジャーの更なる役割の拡大と業務負担の軽減策について検討を求めています。一方で、専門職団体や労働組合などは、ケアマネジャーの業務範囲や責任の拡大に見合った処遇改善を並行して検討するよう働き掛けています。
ケアマネジャー・ケアマネジメントを巡る制度改正の検討状況について、直近の動向を確認しましょう。
”ケアマネジメントの質の向上”を巡る論点・キーワード
これまでに進んでいる取り組み
「ケアマネジメントの質の向上」(及び公正中立性の確保)は、21年度介護報酬改定でも掲げられたテーマで、この方針に沿って特定事業所加算の要件見直しや、医療と介護の連携を評価する加算(通院時情報連携加算)の新設などが実施されました。
さらに、現代のケアマネジャーには、ヤングケアラーや仕事と介護の両立支援といった新たな社会課題への対応力や科学的な根拠に基づく支援の組み立てなども期待されています。こうした役割を担ってもらうための施策として、現在、ケアマネジャーの法定研修カリキュラムの見直しに向けた検討が進められています。なお、研修カリキュラムの改正は23年10月以降に実施される予定で、これまでにカリキュラムやガイドラインの見直し案がまとめられています。(※編集注/22年10月14日追記:研修内容などを示す改正告示が24年4月に適用される予定です)
(【画像】第96回社会保障審議会介護保険部会(22年8月25日開催)参考資料より
)
※関連情報:Vol.1073介護支援専門員の法定研修のカリキュラムやガイドライン等について(情報提供)
ケアマネジャーに求められる役割の拡大に伴い、主にICTを活用した負担軽減策も実施されています。まず、法定研修については受講負担を軽減するため、近年は国が各都道府県がオンラインでの研修を実施できるように促しています。このほか、介護サービス事業所との情報連携や介護報酬改定の制度設計(逓減性の見直し)によって業務そのものへのICTの導入を促す動きも強まっています。
ケアマネジャーに一層求められる役割と処遇改善に関する要望
それでは、24年度の制度改正やそのための法改正に向け、どのような検討が進んでいるのでしょうか。厚労省は、介護保険部会で”ケアマネジメントの質”を向上させていくために
- 医療と介護の連携や地域における多様な資源の活用(インフォーマルサービスなど)等のケアマネジャーの役割の強化・拡大
- 適切なケアマネジメント手法の実効性の担保や業務負担軽減
などの方策について検討を促しています。
ケアマネジャーがさらに広範囲で能力を発揮することを期待するという立場には複数の委員が賛同しています。しかし、労働者や専門職団体からはそれに伴う処遇改善の要望もなされています。具体的には以下のような意見がありました。
- 「通院同行をして医師と情報共有する」「利用者の話を聞き、本人や家族との橋渡しをすることで、認知症や認知機能が低下している高齢者の在宅継続率を高めている」「成年後見人と連携して意思決定支援チームを作ってそれに同行する」といった柔軟で包括的なケアマネジメントを遂行できるケアマネジャーが一部で活躍し始めている
- 法定研修の費用について、自治体による差が激しい。自治体への働きかけを強め、研修費用を下げてほしい。
- 介護職員処遇改善加算の対象事業所に居宅介護支援事業所を加えるなど、処遇を改善することが人材とその先のケアマネジメントの質の向上につながる。
- 待遇改善には成果に基づく報酬という視点が必要である。
ケアマネジメントへの自己負担導入の議論は決着の道筋見えず
また、注目されているのが経済界や政府の「全世代型社会保障構築会議」からも見直しの検討が提言されているケアマネジメントへの利用者負担の導入です。
この話題については、「給付と負担」が議題となった9月末同部会で改めて議論されていますが、立場が異なる委員の主張はやはり平行線をたどっています。
厚労行政だけでなく、政府や政局の動向が影響してくるため、注視が必要な状況が続きそうです。
