社会保障審議会・介護給付費分科会は、2024年度の介護報酬改定の対応項目のうち、サービス全般に関わるテーマについて9月も検討を進めています。
月初に集中的に検討されたのは「介護人材の確保と介護現場の生産性の向上」についてです。
厚生労働省はこれまで、介護ロボットや見守り機器といった介護テクノロジーや介護助手等の活用に対する効果測定事業をおこない、エビデンスの収集・蓄積に取り組んできました。これらは、特定施設(介護付き有料老人ホーム)等での人員配置基準の緩和をにらんだものですが現場を代表する立場の委員は、牽制する姿勢を崩していません。
厚労省は9月8日の会合で、「介護人材の確保と生産性向上」を進めるための施策として、以下の4つの議題を示しました。
1.介護人材の処遇改善等 2.人員配置基準等 3.介護現場の生産性向上の推進/経営の協働化・大規模化 4.外国人介護人材に係る人員配置基準上の取り扱いについて
こちらのページでは、上記4つの議題のうち、【介護現場の生産性向上の推進】を巡る検討についてまとめます。(”経営の協働化・大規模化”については別稿でご紹介します。)
「介護現場の生産性向上の推進」に関して、厚労省が示した論点は以下の通りです。
今後、介護サービスの需要が更に高まる一方、生産年齢人口が急激に減少していくことが見込まれ、介護人材の確保は喫緊の課題となっている。こうした状況を踏まえ、 ・利用者のQOLや安全等の確保を図りつつ、介護職員の業務負担軽減や介護サービスの質の向上を図り、 ・多様な人材がやりがいをもって働くことができる介護現場となるように、 更なるテクノロジーの活用やいわゆる介護助手の活躍を推進するに当たって、どのような方策が考えられるか。
厚労省の示す「介護現場の生産性向上」とは、介護ロボット等のテクノロジーの活用やいわゆる介護助手の活躍を促し、業務の改善や効率化等を進めることです。
これらの取り組みにより職員の業務負担の軽減を図るとともに、生み出した時間を直接的な介護ケアの業務に充て、利用者と職員が接する時間を増やすなど、介護サービスの質の向上にも繋げようとするというねらいがあります。
(【画像】第223回社会保障審議会介護給付費分科会資料3より(以下・同様))
こうした目的を見据え、2021年度改定以降には「見守り機器等を活用した夜間見守り」「見守り機器以外の介護ロボットの活用」「介護助手の活用」等の効果を実証する事業が行われてきました。そして、厚労省はそれらの結果を以下のようにまとめています。
介護ロボットや見守り機器等のテクノロジーの活用の重要性は誰もが認めるものの、同分科会では安全性のエビデンスを求める意見など、拙速な取り組みには慎重意見が根強くあります。
日本労働組合総連合会の小林司委員は、「テクノロジーの導入で介護サービスの質の向上や業務負担の軽減につなげることは、重要だ」としたうえで、「人員基準の緩和を目的とすることのないようにすべき」と強調しました。
また、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、移乗支援用介護ロボットの導入後に、業務時間が増加した調査結果について言及。
「介護現場で何が求められていて、なにをどう導入すると効果的なのかが非常に重要」だとしたうえで、「ネガティブな結果が出ているものに財政的な支援を行うのではなく、ポジティブなエビデンスが出ているものをサポートし、推進していくべき」と提案しました。
先述の調査結果では、介護助手等を雇用している介護施設・事業所は全体の約51%と、活用が進みつつあることも示されています。
また、介護助手として活躍する人材の内訳では、全体の約81%は女性、年齢が60歳以上の方が約57%、介護系の専門資格が「いずれも保有していない」が約59%を占める現状を示しました。
日本介護福祉士会の及川ゆりこ委員は、前出の介護テクノロジーの活用や介護助手の活躍を推進するにあたり、「導入を前提とするのではなく導入することの妥当性を介護現場に理解していただいたうえで、前向きに取り入れていく道筋を丁寧に作っていくべき」と述べました。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。