行方不明事故にどう備える?介護事業者が実践すべき対策~事前対策編~

2021.12.17
2021.12.27
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ここは小規模多機能型居宅介護事業所。

「通い」「訪問」「宿泊」の各サービスを組み合わせて在宅での生活支援などを行う地域密着型のサービスだ。

この事業所を3カ月ほど前から利用している鈴木さん(仮名)。

要介護4の男性で、重度の認知症の利用者だ。歩行は自立している。

鈴木さんは、宿泊サービスを利用している際、度々、玄関や窓から出て行こうとする言動があり、職員も対応に頭を悩ませていた。

そんなある日。最悪の事態が起こった。

職員が他の利用者をトイレ介助している間に、鈴木さんが行方不明になったのだ。

目を離したのはほんの数分間に過ぎない。警察へも至急連絡し、懸命の捜索が行われたが、鈴木さんは一向に見つからない。

行方不明事故の発生から3日後、施設から約590m離れた畑の畝で、うつぶせの状態で倒れている鈴木さんが発見された。

鈴木さんは死亡していた。

        (さいたま地方裁判所平成25年11月8日判決の事例を元に筆者が作成)
目次
    0.はじめに:行方不明事故と結果の重大性
      1.裁判例から考える行方不明事故防止の事前対策の重要性
      2.介護事業者が注意すべきポイント

      0.はじめに:行方不明事故と結果の重大性

      厚生労働省によると、わが国の認知症高齢者の数は、2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが見込まれています(厚生労働省『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~』)。

      認知症には様々な症状がありますが、歩き回って帰り道がわからなくなり、行方不明になってしまうケースがあります。

      警察庁によると、令和2年度における認知症又はその疑いによる行方不明者の数は、実に1万7565人にも上ります(警察庁生活安全局安全企画課『令和2年における行方不明者の状況』)。なお、この行方不明者数は警察に行方不明者届が出された者の数ですので、実際の行方不明者はこれよりも多いと予想されます。

      介護施設においても、認知症の利用者が職員の気づかぬうちに介護施設から出て行き、行方不明になる事例が生じています。また、幸い発見できたものの、介護施設から出て行き、職員総出で探し回り肝を冷やしたというケースも多々発生しています。

      仮に、認知症の利用者が介護施設外に出て行ってしまった場合、交通事故などの何らかの事故に遭ったり、発見が遅れたりすることで、命を落とす危険があります。実際に、真夏では脱水症状が原因で、真冬では凍死が原因で命を落としてしまう事故が発生しています。

      このように、ひとたび行方不明事故が生じると、その結果は人命に関わる重大事故に発展する可能性があり、介護事業者としては、事前の対策・事後の対策・日頃からの訓練の実施が非常に重要になります。

      そこで、今回と次回の2回に分けて、介護施設で発生した行方不明事故について、介護事業者の安全配慮義務違反の有無が争われた裁判例を元に、介護事業者が実施すべき対策を検討します。

      1.裁判例から考える行方不明事故防止の事前対策の重要性

      冒頭のケースは、さいたま地方裁判所平成25年11月8日判決の事例の概要です。

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