厚生労働省は6月25日に社会保障審議会 介護給付費分科会をオンラインで開催。「自立支援・重度化防止」「介護人材の確保」「制度の安定性・持続可能性」などをテーマに、2021年度介護報酬改定に向けた論点を議論しました。その中で、新型コロナウイルス感染症の影響により施行されている臨時的な特例などについて、制度化を求める意見があがっています。その内容を確認しておきましょう。
●人員基準の特例
民間介護事業推進委員会の今井委員は、デイサービス等の経営悪化に触れつつ、通所介護の職員が訪問介護のサービスを提供できるという人員基準の臨時的な扱いについて、複合型サービスとして体制を整えてはどうかと提案しました。
●運営基準の特例
居宅介護支援のサービス担当者会議については、感染対策のために利用者宅を訪問せず、電話やメール、文書を活用して対応することが可能となっています。
このようにリモートできる業務を仕分けし、連携や会議等をオンラインで開催できるように、要件を見直してはどうかという意見が複数あがりました。専門職の各種研修についても、オンライン化を進めるべきという声があがっています。
●感染症対策の徹底支援
日本看護協会常任理事の岡島委員は、中小事業所の専門職人材の確保が難しいことに触れつつ、感染症対策の知識やスキルがある病院勤務の看護師など専門職が、組織の枠を超えて活躍できる体制づくりを提案しました。
2次補正予算で決定した新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)では、感染症対策の支援策として、専門職による感染症対策の研修実施や、業務継続計画(BCP)の作成などの費用を100%補助する事業があります。こういった取組を継続的に行うべく、介護報酬改定の議論で話し合うことを提案しています。
その他、介護施設・事業所の感染症対策について、業務の増加など負荷がかかっていることに対して、介護報酬上どのように評価していくか検討すべき、という意見もありました。
慶應義塾大学大学院教授の堀田委員から、新型コロナウイルス感染症の介護・高齢者支援への影響について、介護保険サービス事業者等を対象にした調査の結果が報告されました。
新型コロナウイルスの影響でほとんどの事業所が「業務が増えた」と回答しています。特に増えた業務として下記があがっています。
・事業所内の感染症対策(衛生管理等)(81.9%)
・新型コロナ及びその対策の情報収集(76.4%)
・行政からの通知・連絡への対応(52.7%)
・感染防御資材調達のための業務(52.3%)
通所系サービスに限ると、「サービス提供体制や内容の変更に伴う利用者や家族への説明」が47.0%となりました。感染症対策のため、業務量が増加していることがわかります。
支援や環境整備として求めるものについては、下記の項目があがりました。
・感染防御資材の優先調達(76.6%)
・感染者等発生時の陽性者の速やかな入院(41.5%)
・発熱・咳等の症状がある利用者・入所者等及び職員への積極的な検査の実施(38.2%)
・職員への特別手当(危険手当を含む)の支給(34.1%)
・感染者等発生時の指針策定(30.7%)
・感染者等発生時の介護職等の応援要員の確保(29.5%)
・感染者等発生時の利用者・入所者等の受入施設の確保(29.2%)
新型コロナウイルス感染症がいつ収束するのか見通しが立たない中、厚労省は人員基準等の特例の期限は設けていないと明言しています。委員から意見にあがったように、臨時的な対応ではなく、制度化に向けて議論が進むのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症による影響が、2021年度の介護報酬改定にどのように反映されていくのか、議論の動向に注目しておきましょう。
調査結果については、その他、事業運営への影響や、収入・支出、ケアマネジメントへの影響などが報告されています。
第178回社会保障審議会介護給付費分科会 堀田委員提出資料
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年6月26日掲載のものです。
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