居宅介護支援事業所のケアマネジャーの業務は、ケアプランの作成、サービス担当者会議の実施、モニタリングの実施、サービス利用票や給付管理票などの書類作成、自治体や介護サービス事業者との連絡調整など多岐にわたります。
経営者や管理者の皆様は、忙しく働くケアマネジャーの方々を見て、業務負担や残業時間を減らしたいと考えているのではないでしょうか?
しかし、いざ取り組みを始めようと思っても「業務を効率化するために何をすればいいの?」、「どのようなシステムやツールを選べばいいの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
そのような皆様に向けて、この記事では、ケアマネジャーの業務を効率化するためのポイントや具体的な改善方法についてご紹介しています。
ここでは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの業務を効率化するポイントを4つに分けてご紹介します。
それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
まずは、現状の業務の状況を把握するところから始めます。
1日、1週間、1カ月単位でみた時に、誰がどのような業務を行っていて、その業務を行うのにどれくらいの時間がかかっているのかを可視化します。
具体的には、職員ごとに1日の業務内容と時間を記録する形で記載して、1カ月ごとに集計する流れで進めることになります。
業務内容と時間を可視化したら、普段の業務における改善可能なポイントを洗い出します。
例えば、事業所の平均と比べて給付管理票など特定の書類の作成に時間がかかっているケアマネジャーがいた場合、そのケアマネジャーの給付管理票の作成・連絡手順の中に改善可能なポイントが含まれている可能性があります。
業務改善が可能なポイントがいくつか見えてきたら、優先的に効率化を進めたい項目を決めます。
効率化を行ったときにインパクトが大きいと思われるものから優先的に進めていくのが良いでしょう。
業務改善を行うにあたって注意すべきポイントとして、「業務への極端なこだわりを持たないこと」が挙げられます。
ケアマネジメントという業務なので、こだわりを持って仕事に就くことが重要だと思いますが、こだわりすぎてしまった場合は、その業務にかける時間が増えることになってしまい、また、こだわりを持って業務を行うことが目的となって効率化という視点で考えることが難しくなってしまうことがあります。
ですから、「極端なこだわりになっていないか?」、「そこまで時間と労力をかけて行うべきことなのか?」を一度立ち止まって考えることも必要でしょう。
ここでは、ケアマネジャーの業務を効率化するための具体的な方法をいくつかご紹介します。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
業務について、フローチャートやマニュアルを作成することによって、業務のクオリティをある程度均一化して、効率化を図ることができるでしょう。
特に、ケアマネジャーとしての経験が少ない職員は、フローチャートやマニュアルがあることで、ケアマネジメント業務だけでなく、勤怠や経費の請求・精算方法など事業所内のルールを把握しやすくなり、効率的に業務を進められるようになるでしょう。
一般的にミスが発生した場合、その対応に手間と時間がかかり、業務効率が下がります。
そのため「ミスを発生させないこと」はとても重要な要素であり、ミスを予防するために情報共有や再発防止策の検討などの取り組みを行うことは、業務効率化に繋がっていると言えます。
改善が難しいと判断される場合は、業務の担当者を変更することで効率化が図れる場合があります。
例えば、利用者様やその家族との関係構築が上手くいかず、そのために通常よりも時間を多く取られてしまうケースなどは、担当を別のケアマネジャーに変更することで効率化が図れるケースがあります。
業務効率化を図るためには、適切なスケジュール管理が重要になります。
ケアマネジャーの業務では、利用者様や家族との面談を定期的に行うため、例えば、同じ地域への訪問を同じ日の連続した時間帯に設定し、効率的に訪問できるスケジュールを作ることや業務内容に応じた目標時間を設定することで、時間を意識しながら業務を行うことができ、効率化に繋がるでしょう。
作業自体をスピードアップすることで業務を効率化することができます。
例えばオフィスソフトの効率的な使い方や書類作成のポイントを職員間で共有したり、作業を効率化するためのソフト・ツールを導入したりするといった取り組みがあります。
ここでは、ケアマネジャーの業務を効率化するための居宅介護支援事業所によく導入されている4つのソフト・ツールをご紹介します。
利用者様の自宅や介護サービス事業所を訪問するケアマネジャーにとって、外出先で使用できるタブレットが導入されています。
外出先での利用者様の基本情報、ケアプラン等を確認することはもちろん、福祉用具のカタログ、地域の資源なども簡単に検索することができ、利用者様の様子などを写真として撮影・保存することもできるようになります。
ケアマネジャーの業務の中で、書類作成などの事務業務の負担はとても大きいです。書類作成業務を効率化するためには、「転記を減らすこと」、「ミスを減らすこと」、「効率的に入力できること」が必要となり、記録ソフト・請求ソフトが導入されています。
特に、タブレットでも操作できる記録ソフトは外出先でも直接入力できるためとても便利です。
ケアマネジャーの業務の中で、関係者・関係各所との連絡調整も負担になっています。
チャットアプリを利用することで、管理者と職員の間、職員間でスピーディーな情報共有ができ、タスクの管理にも役立ちます。また、利用者様やその家族、介護サービス事業所等との急ぎではない連絡にも、送信の履歴が残り、既読状態を確認することができるので導入されています。
パソコンやスマートフォン、タブレット上で、スケジュール管理や共有ができるのが、Googleカレンダーです。
利用者様宅の訪問予定やサービス担当者会議等の予定をそれぞれのケアマネジャーが入力することで、個人のスケジュール管理に役立ち、また、事業所内でカレンダーを共有することで他の職員が今何をしているのかを簡単に把握することができます。
厚生労働省では、介護現場におけるICT化を進めています。
介護現場で行われている紙媒体での情報のやり取りを抜本的に見直して、ICTを介護現場のインフラとするために以下のような施策が進められています。
2019年度から、地域医療介護総合確保基金を財源として「ICT導入支援事業」が実施されています。
記録業務、情報共有業務、請求業務を一気通貫で行う事ができるように介護ソフトやタブレット端末の導入について支援する補助金制度となっています。
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間におけるケアプランの情報のやりとりを、オンライン上で完結させるための情報連携基盤として開発されています。
現在、厚生労働省主導のもとで国民健康保険中央会がシステム開発を進め、2023年4月から本格稼働が開始される予定となっています。
ここまで、居宅介護支援事業所の業務効率化のポイントや具体的な方法・ツール等をご紹介してきました。
業務効率化を進めることは、残業時間を減らすこと、空いた時間をサービスの質を向上させるための取り組みに充てること、より多くの件数を担当してもらうことなど、居宅介護支援事業所の経営にとって重要な取り組みとなります。
まずは現状の業務の状況を整理・把握して、課題を洗い出すところから始めてみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。