デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準とは?運営指導のチェック項目もご紹介!

2023.01.30
2023.04.12
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デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の3つの指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)の中でも、一番ボリュームが多く、複雑なのが運営基準です。

「運営基準を満たせているのか不安。」「運営指導(実地指導)で運営基準違反と指摘されないためにどうすればいいの?」などお悩みの経営者・管理者の方もいらっしゃるでしょう。

そのような方々にむけて、この記事では、デイサービスの運営基準の内容と運営指導(実地指導)で確認されるポイントについて解説していきます。

目次
    デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準とは?
    デイサービス(通所介護)の運営指導でチェックされる運営基準の項目とは?
    デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準違反の実例とは?
      デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準違反にならないためにとるべき対策とは?
        まとめ

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準とは?

          デイサービスの運営基準には、事業所が適切な介護サービスを提供するために、提供するサービスの内容や提供方法、必要な書類や記録、取り組みなどが規定されています。

          通所介護は「指定居宅サービス等の人員、設備及び運営の基準」に、地域密着型通所介護は「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」に定められています。

          通所介護(地域密着型通所介護)の運営基準一覧

          1. 内容および手続きの説明と同意
          2. サービス提供拒否の禁止
          3. サービス提供困難時の対応
          4. 受給資格等の確認
          5. 要介護認定の申請を援助
          6. 心身の状況等の把握
          7. 居宅介護支援事業者等との連携
          8. 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
          9. 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
          10. 居宅サービス計画等の変更を援助
          11. サービス提供の記録
          12. 利用料等の受領
          13. 保険給付の請求のための証明書の交付
          14. 通所介護(地域密着型通所介護)の基本取り扱い方針
          15. 通所介護(地域密着型通所介護)の具体的取り扱い方針
          16. 通所介護(地域密着型通所介護)計画の作成
          17. 利用者に関する市町村への通知
          18. 緊急時等の対応
          19. 管理者の責務
          20. 運営規程
          21. 勤務体制の確保等
          22. 業務継続計画の策定等
          23. 定員の遵守
          24. 非常災害対策
          25. 衛生管理等
          26. 掲示
          27. 秘密保持等
          28. 広告
          29. 居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
          30. 苦情処理
          31. 地域との連携等
          32. 事故発生時の対応
          33. 虐待の防止
          34. 会計の区分
          35. 記録の整備

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の人員基準とは?

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の人員基準には、介護職員や機能訓練指導員などの最低限配置しなくてはならない職種、資格要件、配置基準などが定められています。

          デイサービスの人員基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の設備基準とは?

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の設備基準には、食堂や機能訓練室などの最低限設置しなくてはならない設備や備品などについて定められています。

          デイサービスの設備基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。

          ここからは、通所介護の運営基準の項目をいくつかピックアップしてご紹介していきます。

          11.サービス提供の記録

          通所介護サービスを提供した際、以下の事項を利用者様の居宅サービス計画の書面またはサービス利用票等に記載しなければなりません。(要2年間保存)。

          • サービス提供日
          • サービス内容
          • 保険給付額
          • その他必要な事項

          また、利用者様からの申し出があった場合には、記録を文書等により利用者様に提供しなければなりません。

          12.利用料等の受領

          法定代理受領サービスに該当する通所介護サービスを提供した際には、「その利用者から利用料の一部として、当該指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額から当該指定通所介護事業者に支払われる居宅介護サービス費の額を控除して得た額の支払を受けるものとする。」とされています。

          また、法定代理受領サービスに該当しない通所介護サービスを提供した際には、「その利用者から支払を受ける利用料の額と、指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額との間に、不合理な差額が生じないようにしなければならない。」とされているため、注意が必要です。

          これら以外に、以下の費用について、利用者様から利用料を受け取ることができます。以下にかかわるサービスを提供する際は、あらかじめ、利用者様またはその家族に対し、サービスの内容や費用について説明を行い、同意を得なければなりません。

          一 利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域に居住する利用者に対して行う送迎に要する費用

          二 指定通所介護に通常要する時間を超える指定通所介護であって利用者の選定に係るものの提供に伴い必要となる費用の範囲内において、通常の指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額を超える費用

          三 食事の提供に要する費用

          四 おむつ代

          五 前各号に掲げるもののほか、指定通所介護の提供において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められる費用

          引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

          このうち、食事の提供に要する費用については、平成17年9月7日に「居住、滞在及び宿泊並びに食事の提供に係る利用料等に関する指針」が厚生労働省より告示されています。

          16.通所介護(地域密着型通所介護)計画の作成

          通所介護事業所の管理者は、通所介護計画を作成・実行するにあたり、

          • 利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、機能訓練等の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所介護計画を作成する
          • 既に居宅サービス計画が作成されている場合は、その居宅サービス計画の内容に沿って作成する
          • 内容について利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得る
          • 通所介護計画を利用者に交付する
          • それぞれの利用者について、通所介護計画に従ったサービスの実施状況及び目標の達成状況の記録を行う

          といったことを守る必要があります。

          20.運営規程

          通所介護事業所ごとに、以下の項目を記載した運営規程を作成しなければなりません。

          1. 事業の目的及び運営の方針
          2. 従業者の職種、員数及び職務の内容
          3. 営業日及び営業時間
          4. 指定通所介護の利用定員
          5. 指定通所介護の内容及び利用料その他の費用の額
          6. 通常の事業の実施地域
          7. サービス利用に当たっての留意事項
          8. 緊急時等における対応方法
          9. 非常災害対策
          10. 虐待の防止のための措置に関する事項(※)
          11. その他運営に関する重要事項

          ※虐待の防止のための措置については、2024年3月31日までは努力義務。

          21.勤務体制の確保等

          利用者様に対して適切にサービスを提供できるよう、事業所ごとに職員の勤務の体制を定めなければなりません。

          また、勤務表は「月ごと」に作成しなければならず、勤務表には以下の項目がわかるように記載しなければなりません。

          【勤務表の項目】

          • 日々の勤務時間
          • 常勤・非常勤
          • 専従の生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員の配置状況
          • 管理者との業務関係

          その他にも、当該事業所の従業者によってサービスを提供しなければならないこと(第三者へ委託できる業務の範囲)、従業者の資質向上のために研修の機会を確保しなければならないこと、有資格者を除くすべての従業者に認知症介護に係る基礎的な研修を受講させなければならないこと(2024年3月31日までは努力義務)、職場におけるハラスメントを防止するための措置を講じなければならないことが定められています。

          32.事故発生時の対応

          サービス提供中に事故が発生した場合、市町村、利用者様の家族、居宅介護支援事業者等に連絡を行い、必要な措置を講じなければなりません。また、事故の状況やどのような対応をとったのかを記録し、2年間保存しなければなりません。

          その他にも、事故が発生した場合の対応方法についてあらかじめ定めておかなければならないこと、賠償を行うために損害賠償保険への加入または賠償資力を有することが望ましいこと、事故の原因を解明して再発防止策を講じなければならないことが定められています。

          デイサービス(通所介護)の運営指導でチェックされる運営基準の項目とは?

          通所介護の運営指導(実地指導)では、上記でご紹介した運営基準の項目に対して、以下のような標準確認項目と確認文書が定められています。

          11.サービス提供の記録

          【確認項目】

          • 通所介護計画にある目標を達成するための具体的なサービスの内容が記載されているか
          • 日々のサービスについて、具体的な内容や利用者様の心身の状況等を記録しているか
          • 送迎が適切に行われているか

          【確認文書】

          • サービス提供記録
          • 業務日誌
          • 送迎記録

          12.利用料等の受領

          【確認項目】

          • 利用者からの費用徴収は適切に行われているか
          • 領収書を発行しているか
          • 医療費控除の記載は適切か

          【確認文書】

          • 請求書
          • 領収書

          16.通所介護(地域密着型通所介護)計画の作成

          【確認項目】

          • 居宅サービス計画に基づいて通所介護(地域密着型通所介護)計画が立てられているか
          • 利用者の心身の状況、希望および環境を踏まえて通所介護(地域密着型通所介護)計画が立てられているか
          • サービスの具体的内容、時間、日程等が明らかになっているか
          • 利用者又はその家族への説明・同意・交付は行われているか
          • 目標の達成状況は記録されているか
          • 達成状況に基づき、新たな通所介護(地域密着型通所介護)計画が 立てられているか

          【確認文書】

          • 居宅サービス計画
          • 通所介護計画(利用者又は家族の同意があったことがわかるもの)
          • アセスメントシート
          • モニタリングシート

          20.運営規程

          【確認項目】

          • 運営における以下の重要事項について定めているか
            • 事業の目的及び運営の方針
            • 従業者の職種、員数及び職務の内容
            • 営業日及び営業時間
            • 指定通所介護の利用定員
            • 指定通所介護の内容及び利用料その他の費用の額
            • 通常の事業の実施地域
            • サービス利用に当たっての留意事項
            • 緊急時等における対応方法
            • 非常災害対策
            • 虐待の防止のための措置に関する事項
            • その他運営に関する重要事項

          【確認文書】

          • 運営規程

          21.勤務体制の確保等

          【確認項目】

          • サービス提供は事業所の従業者によって行われているか
          • 資質向上のために研修の機会を確保しているか
          • 勤務表の記載内容は適切か
          • 認知症介護に係る基礎的な研修を受講させるため必要な措置を講じているか
          • 性的言動、優越的な関係を背景とした言動による就業環境が害されることの防止に向けた方針の明確化等の措置を講じているか

          【確認文書】

          • 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書
          • 研修計画、実施記録
          • 勤務実績表(勤務実績が確認できるもの)
          • 方針、相談記録

          32.事故発生時の対応

          【確認項目】

          • 事故が発生した場合の対応方法は定まっているか
          • 市町村、家族、居宅介護支援事業者等に報告しているか
          • 事故状況、対応経過が記録されているか
          • 損害賠償すべき事故が発生した場合に、速やかに賠償を行うための対策を講じているか
          • 再発防止のための取組を行っているか

          【確認文書】

          • 事故対応マニュアル
          • 市町村、家族、居宅介護支援事業者等への報告記録
          • 再発防止策の検討の記録
          • ヒヤリハットの記録

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準違反の実例とは?

          ここでは、運営基準違反により行政処分に至ったケースをいくつかご紹介します。

          【東京都八王子市における指定取消の例】

          (ア)通所サービスを行っていないにもかかわらず、行ったとする送迎業務日誌、バイタル記録及び連絡帳を提出した。

          (イ)代表者の指示により作成された、架空の連絡帳を提出した。

          (ウ)5時間以上7時間未満のサービス提供しか行っていないにもかかわらず7時間以上9時間未満の時間を記載した連絡帳を提出した。

          ※運営基準第19条に違反

          【鳥取県における指定取消の例】

          出勤簿、シフト表、営業日誌、サービス提供票の書類を偽装し、監査時に虚偽の報告を行った。

          ※運営基準第19条、第101条に違反

          【広島県における指定取消の例】

          利用者に対し適切なサービスを提供する勤務体制を定めるべきところ、不適切な人員配置を行い、この実態とは異なる出勤簿等を偽造して提出していた。また、勤務体制が不適当であることを認識しながら、基準を遵守させるために必要な指揮命令を行わなかった。

          ※運営基準第101条に違反

          【京都府京都市における指定取消の例】

          同事業所で発生した事故について,事業者は,1箇月後に治療費の一部を被害者に支払ったのみであり,損害賠償金及び治療費等約200万円について,1年後,本市が事業所で実施した監査まで支払われておらず,本件処分に係る聴聞期日においても損害賠償金等約190万円が未払いであった。

          ※運営基準第104条の3に違反

          デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の運営基準違反にならないためにとるべき対策とは?

          運営基準に違反しないように事業所を運営するためには、基準に定められる内容をしっかりと理解した上で、事業所としてどのような対応・対策をとるのかを明確にしなくてはいけません。

          それでは、対策の例を見ていきましょう。

          【運営基準違反にならないためにとるべき対策の例】

          • 虚偽の報告を行わないようにコンプライアンスについて周知徹底する。
          • 作成が義務付けされている書類を正確に作成し、保管する仕組みとチェックする体制を整える。
          • 勤務体制を確保するために、適切な人員配置を行う。そのための職員を採用する。
          • 事故が発生した場合に損害賠償責任を果たせるように、賠償責任保険に加入する。
          • 指針・マニュアル等の内容を定期的に確認し、定期的に職員に周知する機会を設ける。
          • 実施しなくてはいけない研修を網羅した年間計画を作成し、研修の実施状況を確認する。

          まとめ

          ここまで、デイサービスの運営基準や運営指導で確認されるポイントについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

          運営基準に違反しないためには、運営基準の内容を理解し、それぞれの項目に定められる対応を確実に行うことが必要になります。その上で、確実に実施したことを証明するために、抜けもれなく記録し、保管することが大切です。

          ここでご紹介した内容が、事業所運営のお役に立てば幸いです。

          最後までお読みいただきありがとうございました。

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