デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の3つの指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)の中でも、一番ボリュームが多く、複雑なのが運営基準です。
「運営基準を満たせているのか不安。」「運営指導(実地指導)で運営基準違反と指摘されないためにどうすればいいの?」などお悩みの経営者・管理者の方もいらっしゃるでしょう。
そのような方々にむけて、この記事では、デイサービスの運営基準の内容と運営指導(実地指導)で確認されるポイントについて解説していきます。
デイサービスの運営基準には、事業所が適切な介護サービスを提供するために、提供するサービスの内容や提供方法、必要な書類や記録、取り組みなどが規定されています。
通所介護は「指定居宅サービス等の人員、設備及び運営の基準」に、地域密着型通所介護は「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」に定められています。
デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の人員基準には、介護職員や機能訓練指導員などの最低限配置しなくてはならない職種、資格要件、配置基準などが定められています。
デイサービスの人員基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。
デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の設備基準には、食堂や機能訓練室などの最低限設置しなくてはならない設備や備品などについて定められています。
デイサービスの設備基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。
ここからは、通所介護の運営基準の項目をいくつかピックアップしてご紹介していきます。
通所介護サービスを提供した際、以下の事項を利用者様の居宅サービス計画の書面またはサービス利用票等に記載しなければなりません。(要2年間保存)。
また、利用者様からの申し出があった場合には、記録を文書等により利用者様に提供しなければなりません。
法定代理受領サービスに該当する通所介護サービスを提供した際には、「その利用者から利用料の一部として、当該指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額から当該指定通所介護事業者に支払われる居宅介護サービス費の額を控除して得た額の支払を受けるものとする。」とされています。
その利用者から利用料の一部として、当該指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額から当該指定通所介護事業者に支払われる居宅介護サービス費の額を控除して得た額の支払を受けるものとする。
また、法定代理受領サービスに該当しない通所介護サービスを提供した際には、「その利用者から支払を受ける利用料の額と、指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額との間に、不合理な差額が生じないようにしなければならない。」とされているため、注意が必要です。
その利用者から支払を受ける利用料の額と、指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額との間に、不合理な差額が生じないようにしなければならない。
これら以外に、以下の費用について、利用者様から利用料を受け取ることができます。以下にかかわるサービスを提供する際は、あらかじめ、利用者様またはその家族に対し、サービスの内容や費用について説明を行い、同意を得なければなりません。
一 利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域に居住する利用者に対して行う送迎に要する費用 二 指定通所介護に通常要する時間を超える指定通所介護であって利用者の選定に係るものの提供に伴い必要となる費用の範囲内において、通常の指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額を超える費用 三 食事の提供に要する費用 四 おむつ代 五 前各号に掲げるもののほか、指定通所介護の提供において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められる費用
一 利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域に居住する利用者に対して行う送迎に要する費用
二 指定通所介護に通常要する時間を超える指定通所介護であって利用者の選定に係るものの提供に伴い必要となる費用の範囲内において、通常の指定通所介護に係る居宅介護サービス費用基準額を超える費用
三 食事の提供に要する費用
四 おむつ代
五 前各号に掲げるもののほか、指定通所介護の提供において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められる費用
このうち、食事の提供に要する費用については、平成17年9月7日に「居住、滞在及び宿泊並びに食事の提供に係る利用料等に関する指針」が厚生労働省より告示されています。
通所介護事業所の管理者は、通所介護計画を作成・実行するにあたり、
といったことを守る必要があります。
通所介護事業所ごとに、以下の項目を記載した運営規程を作成しなければなりません。
※虐待の防止のための措置については、2024年3月31日までは努力義務。
利用者様に対して適切にサービスを提供できるよう、事業所ごとに職員の勤務の体制を定めなければなりません。
また、勤務表は「月ごと」に作成しなければならず、勤務表には以下の項目がわかるように記載しなければなりません。
【勤務表の項目】
その他にも、当該事業所の従業者によってサービスを提供しなければならないこと(第三者へ委託できる業務の範囲)、従業者の資質向上のために研修の機会を確保しなければならないこと、有資格者を除くすべての従業者に認知症介護に係る基礎的な研修を受講させなければならないこと(2024年3月31日までは努力義務)、職場におけるハラスメントを防止するための措置を講じなければならないことが定められています。
サービス提供中に事故が発生した場合、市町村、利用者様の家族、居宅介護支援事業者等に連絡を行い、必要な措置を講じなければなりません。また、事故の状況やどのような対応をとったのかを記録し、2年間保存しなければなりません。
その他にも、事故が発生した場合の対応方法についてあらかじめ定めておかなければならないこと、賠償を行うために損害賠償保険への加入または賠償資力を有することが望ましいこと、事故の原因を解明して再発防止策を講じなければならないことが定められています。
通所介護の運営指導(実地指導)では、上記でご紹介した運営基準の項目に対して、以下のような標準確認項目と確認文書が定められています。
【確認項目】
【確認文書】
ここでは、運営基準違反により行政処分に至ったケースをいくつかご紹介します。
【東京都八王子市における指定取消の例】
(ア)通所サービスを行っていないにもかかわらず、行ったとする送迎業務日誌、バイタル記録及び連絡帳を提出した。 (イ)代表者の指示により作成された、架空の連絡帳を提出した。 (ウ)5時間以上7時間未満のサービス提供しか行っていないにもかかわらず7時間以上9時間未満の時間を記載した連絡帳を提出した。
(ア)通所サービスを行っていないにもかかわらず、行ったとする送迎業務日誌、バイタル記録及び連絡帳を提出した。
(イ)代表者の指示により作成された、架空の連絡帳を提出した。
(ウ)5時間以上7時間未満のサービス提供しか行っていないにもかかわらず7時間以上9時間未満の時間を記載した連絡帳を提出した。
※運営基準第19条に違反
【鳥取県における指定取消の例】
出勤簿、シフト表、営業日誌、サービス提供票の書類を偽装し、監査時に虚偽の報告を行った。
※運営基準第19条、第101条に違反
【広島県における指定取消の例】
利用者に対し適切なサービスを提供する勤務体制を定めるべきところ、不適切な人員配置を行い、この実態とは異なる出勤簿等を偽造して提出していた。また、勤務体制が不適当であることを認識しながら、基準を遵守させるために必要な指揮命令を行わなかった。
※運営基準第101条に違反
【京都府京都市における指定取消の例】
同事業所で発生した事故について,事業者は,1箇月後に治療費の一部を被害者に支払ったのみであり,損害賠償金及び治療費等約200万円について,1年後,本市が事業所で実施した監査まで支払われておらず,本件処分に係る聴聞期日においても損害賠償金等約190万円が未払いであった。
※運営基準第104条の3に違反
運営基準に違反しないように事業所を運営するためには、基準に定められる内容をしっかりと理解した上で、事業所としてどのような対応・対策をとるのかを明確にしなくてはいけません。
それでは、対策の例を見ていきましょう。
【運営基準違反にならないためにとるべき対策の例】
ここまで、デイサービスの運営基準や運営指導で確認されるポイントについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
運営基準に違反しないためには、運営基準の内容を理解し、それぞれの項目に定められる対応を確実に行うことが必要になります。その上で、確実に実施したことを証明するために、抜けもれなく記録し、保管することが大切です。
ここでご紹介した内容が、事業所運営のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。