訪問介護事業者の皆様は、従業員の採用、労働条件の更新の際に雇用契約書や労働条件通知書を作成していることでしょう。
訪問介護では、サービス提供責任者やヘルパーの有効求人倍率が高いことから、採用に課題を感じて、人事制度やキャリアアップ制度について変更を行うことが増えていると思います。
そのような時に、「変更した内容を雇用契約書に記載しなくてはいけないのか知りたい」、「雇用契約書や労働条件通知書のフォーマットを新しくしたい」と考えているのではないでしょうか?
この記事では、訪問介護事業所の雇用契約書に記載する項目やルールについて解説するほか、無料でダウンロードできる雇用契約書と労働条件通知書のひな形をご用意しております。ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。
雇用契約書とは、事業所が職員を雇用する際に、雇用期間や賃金、就業時間などの労働条件を取り決める文書のことです。
職員を雇用する際は、雇用契約書などを用いて労働条件を明示することが労働基準法で定められています。
雇用契約書には、労使間の労働条件の認識を合わせるための書類としての役割があるので、適切に項目を設定してその内容を説明することで、労使間のトラブルを減らすことにも繋がっています。
雇用契約書には、以下のような項目を記載します。
労働条件を明示するために使用する様式のひとつとして、労働条件通知書という様式もあります。
雇用契約書と労働条件通知書の違いは、簡単に言うと「職員の署名押印欄の有無」です。
目的の違いから、雇用契約書には『職員が署名押印する欄がある(契約する)』、労働条件通知書には『職員が署名押印する欄がない(通知する)』という形で使用されています。
労働条件通知書でも、労働基準法で定められている「労働条件の明示」の要件を満たします。ただし、署名押印する欄がないために、万が一トラブルが発生した際に、従業員の「労働条件通知書をもらっていない」という主張に反論できない可能性もあります。
そのため、初めて雇用契約を締結するときや労働条件を大幅に変更するときには、署名押印欄のある雇用契約書を利用しますが、昇給により賃金を変更する際などはトラブルになる可能性が低いことから、労働条件通知書で渡してしまうことも多いようです。
労働基準法では、従業員を雇い入れる際に労働条件を明示することを定めています。雇用契約書は、こうした労働条件を明示する様式の一つです。
(労働条件の明示) 第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。 ② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。 ③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
明示しなければならない労働条件には、「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」があります。
絶対的明示事項とは、従業員を雇い入れる際に必ず明示しなければいけない項目のことです。
【絶対的明示事項の一覧】
このうち、昇給に関する事項以外は、書面で示さなければならないとされています。
相対的明示事項とは、訪問介護事業所としての定めがある場合、必ず明示しなければいけない項目のことです。
【相対的明示事項の一覧】
訪問介護事業所の従業員の多くは、登録ヘルパーや非常勤職員といったパートタイマーとなっています。
パートタイム労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では、パートタイマーを雇用する際に明示しなければいけない事項が決められています。
(労働条件に関する文書の交付等) 第六条 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間・有期雇用労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項及び第十四条第一項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。 2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。
(労働条件に関する文書の交付等)
第六条 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間・有期雇用労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項及び第十四条第一項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。
2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。
パートタイマーを雇う際は、これまで見てきた事項のほかに、文書の交付などにより以下のような項目を明示しなければならないとされているので注意が必要です。
【パートタイマー雇用時に明示する項目】
訪問介護で利用できる雇用契約書と労働条件通知書の様式をご用意しました。無料でダウンロードすることができますので、ご活用いただけると幸いです。
※こちらのひな形ファイルに関しては、ユーザー様の責任にてご利用ください。 また、ご利用の際には、行政からの通知、事業所の最新の状況等に応じて、項目や内容を編集してください。
リンク:労働条件通知書兼雇用契約書のテンプレートを無料ダウンロード(Wordファイル)
リンク:労働条件通知書兼雇用契約書(パートタイマー)のテンプレートを無料ダウンロード(Wordファイル)
ここまで、訪問介護事業所の雇用契約書・労働条件通知書に記載する項目やルールについて述べてきましたが、いかがでしたでしょうか。
訪問介護事業所で従業員を雇用する際には、様々な法律に則り労働条件を明示する必要があります。
ここでご紹介した内容を参考に、ルールを遵守している雇用契約書・労働条件通知書を使っているのか、人事制度等の変更点が雇用契約書等に記載しなくてはいけない項目ではないのか、などを確認しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【監修者情報】 トリプルグッド社会保険労務士法人は、トリプルグッドグループのメンバーファームとして、トリプルグッド税理士法人、トリプルグッド司法書士法人、トリプルグッド行政書士法人、トリプルグッド法律事務所、トリプルグッドウェルスマネジメント株式会社、トリプルグッド株式会社など、さまざまな専門家が連携し、ワンストップでのサービスを提供。介護特化部門を擁し介護事業者の支援に力をいれている。