介護事業を経営している皆様の中には、利用者様との契約書や重要事項説明書などの適切な管理に手間取っている方もいらっしゃるでしょう。
そのような中で、「業務効率化のために電子契約を導入したい」や「契約書を電子化するためにはどうすればいいの?」と感じているのではないでしょうか。
この記事では、介護事業の経営者・管理者の皆様に向けて、電子契約のルールやシステムの導入の流れなどについて解説していきます。
電子契約とは、従来は紙で作成していた契約書に代わり、電子データに電子署名や電子サインなどを入力することによって、契約を締結することを言います。
電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)の第3条には、電子契約書に本人による電子署名が行われているときは、契約が成立したものと推定すると規定されています。
電子契約は以下のような流れで行います。
【電子契約の流れ】
令和3年度(2021年度)の介護報酬改定では、利用者様およびその家族等の利便性向上と事業者の業務負担軽減の観点から、事前に利用者等の承諾を得た上で、介護事業の契約書を電子化することが認められました。
利用者様へ渡す書類の電子化などについては、以下のような省令改正が行われています。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準の解釈通知には、「事業者等は、書面で行うことが規定されている又は想定される交付等(交付、説明、同意、承諾、締結その他これに類するものをいう。)について、事前に利用者等の承諾を得た上で、次に掲げる電磁的方法によることができる」とされています。
ここからは、介護事業者が電子契約を行う場合のルールやガイドラインを詳しく見ていきます。
電磁的方法で契約書や重要事項説明書などを交付する場合、以下の規定を守る必要があります。
2 指定訪問介護事業者は、利用申込者又はその家族からの申出があった場合には、前項の規定による文書の交付に代えて、第五項で定めるところにより、当該利用申込者又はその家族の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該指定訪問介護事業者は、当該文書を交付したものとみなす。 一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの イ 指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機と利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法 ロ 指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された前項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者又はその家族の閲覧に供し、当該利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法) 二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに前項に規定する重要事項を記録したものを交付する方法 3 前項に掲げる方法は、利用申込者又はその家族がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない。 4 第二項第一号の「電子情報処理組織」とは、指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機と、利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。 5 指定訪問介護事業者は、第二項の規定により第一項に規定する重要事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければならない。 一 第二項各号に規定する方法のうち指定訪問介護事業者が使用するもの 二 ファイルへの記録の方式 6 前項の規定による承諾を得た指定訪問介護事業者は、当該利用申込者又はその家族から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該利用申込者又はその家族に対し、第一項に規定する重要事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該利用申込者又はその家族が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
2 指定訪問介護事業者は、利用申込者又はその家族からの申出があった場合には、前項の規定による文書の交付に代えて、第五項で定めるところにより、当該利用申込者又はその家族の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該指定訪問介護事業者は、当該文書を交付したものとみなす。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機と利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された前項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者又はその家族の閲覧に供し、当該利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに前項に規定する重要事項を記録したものを交付する方法
3 前項に掲げる方法は、利用申込者又はその家族がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない。
4 第二項第一号の「電子情報処理組織」とは、指定訪問介護事業者の使用に係る電子計算機と、利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
5 指定訪問介護事業者は、第二項の規定により第一項に規定する重要事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
一 第二項各号に規定する方法のうち指定訪問介護事業者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式
6 前項の規定による承諾を得た指定訪問介護事業者は、当該利用申込者又はその家族から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該利用申込者又はその家族に対し、第一項に規定する重要事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該利用申込者又はその家族が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
電磁的方法で契約書などの同意を得る場合は、例えば、電子契約のシステム上で利用者様や家族などが同意の意思表示をした場合などが考えられます。
詳しくは、「押印についてのQ&A(令和2年6月19日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすることとされています。
電磁的方法で契約書などを締結する場合は、利用者様・事業者等の間の契約関係を明確にする観点から、書面における署名または記名・押印の代わりに、電子署名を活用することが望ましいとされています。
こちらについても、「押印についてのQ&A(令和2年6月19日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にしましょう。
電磁的方法については、以下のガイドライン等を遵守することが求められています。
介護事業の契約書の電子化には、以下のようなメリットが考えられます。
【契約書を電子化するメリット】
厚生労働省が令和4年に行った「文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減に関する調査研究事業」には、実際に契約書の電子化を行った通所介護事業所が、契約書の作成・製本作業に1件あたり30分~1時間かかっていたところ、電子化により5~10分に短縮した事例も報告されています。
介護事業所・訪問看護事業所では、以下の流れで契約書の電子化を行っていきます。
それでは、一つひとつのステップについて詳しく見ていきましょう。
まずはじめに、電子契約サービスの機能を選びましょう。電子契約サービスによって以下のような機能の違いがあるため、ご自身の事業所の契約フローにおいて必要となる機能を確認しましょう。
次に、電子契約サービスに関する情報を集めて比較・検討を行います。
比較検討のポイントは、ステップ①で選定した必要な機能を搭載しているかどうかに加え、
などが考えられます。
使用する電子契約サービスが決まったら、電子契約の運用方法を構築します。
適切で円滑な運用が行えるよう、以下のような準備を行いましょう。
ここまで、介護事業の電子契約のルールやメリット、導入方法などについて解説してきましたが、いかがでしたか。
電子契約を導入することで契約業務を効率化することができますが、電子契約は、ルールや要件を理解し、利用者様・ご家族の同意を得て進める必要があります。
そのための第一歩として、利用者様とご家族に、スマートフォンやパソコンの利用状況、交付する書類の電子化の可否についてアンケートを行ってみてはいかがでしょうか。
そして、アンケート結果をもとにシステムを活用できそうかを判断するのが良いでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。