訪問介護(ヘルパーステーション)の実地指導(運営指導)・監査に必要な書類とチェックリストとは?

2023.01.30
2023.09.04
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介護保険法に基づくサービスを提供する訪問介護事業所では、適切に事業所運営ができているかどうかについて、指定権者(都道府県または市、以下都道府県等と記載。)による定期的に運営指導(実地指導)を受けることになります。

運営指導の日程が通知された事業所の経営者・管理者の皆様は、「運営指導までに何を準備しておけばいいの?」や「具体的にどのような項目がチェックされるの?」といった疑問や不安を感じているのではないでしょうか。

そのような疑問や不安を感じている訪問介護事業所の経営者・管理者の方々に向けて、この記事では、実地指導・監査の必要書類とチェック項目について解説しています。

目次
    行政指導(実地指導・集団指導)と監査の違いとは?
    訪問介護の実地指導・監査に必要な書類とは?
    訪問介護の実地指導の標準確認項目とは?
      訪問介護の実地指導のチェックリスト・自己点検票とは?
      訪問介護の実地指導対策とは?
      まとめ

        行政指導(実地指導・集団指導)と監査の違いとは?

        行政指導(運営指導・集団指導)と監査の違いとは、一言でいうと「実施する目的の違い」です。

        運営指導や集団指導の目的は、「サービスの質の確保と保険給付を適正化すること」です。

        一方、監査の目的は、運営基準違反や不正等の疑いがある場合に、「不正等の内容を的確に把握すること」にあります。

        行政指導(運営指導・集団指導)と監査の関係性をわかりやすく図にすると以下のようになります。

        訪問介護の運営指導(実地指導)とは?

        運営指導(実地指導)とは、都道府県等が原則事業所を訪問し、サービスの質の確保と保険給付の適正化を目的として、法令の遵守の状況等を確認することです。

        運営指導は、指定の有効期間中(6年間)に少なくとも1回以上実施されることになっています。

        『実地指導』という名称の方が馴染みがあるかもしれませんが、確認する内容によってはオンラインツールを活用して実施するケースもあることから、2022年に『運営指導』という名称に変更されました。

        運営指導は以下の3つの項目について実施されます。

        そして運営指導が実施された結果、『指導なし』または、指摘があった場合は指摘事項の程度に応じて『助言』、『口頭指導』、『文書指導』といった指導等を受けることになります。

        (1)介護サービスの実施状況指導

        利用者様に対して適切なサービスを提供しているかをチェックされ、必要に応じた指導が行われます。

        (2)最低基準等運営体制指導

        人員基準、設備基準、運営基準等に規定されている運営体制を満たしているかをチェックされ、必要に応じた指導が行われます。

        ※原則実地。現場に行かなくても確認可能と判断された場合、オンラインツールを活用し、実施されることがあります。

        (3)報酬請求指導

        適正に介護報酬を請求しているかをチェックされ、必要に応じた指導が行われます。

        ※原則実地。現場に行かなくても確認可能と判断された場合、オンラインツールを活用し、実施されることがあります。

        訪問介護の監査とは?

        監査とは、指定基準違反や不正請求等が疑われる際に、都道府県等が事業所の訪問または関係者の出頭を通し、不正等の内容を的確に把握することを目的として、法令の遵守の状況等を確認することです。

        監査は、実施中の運営指導において、以下の4つの項目のうちいずれかに該当した場合、実施されることになっています。

        1. 人員、施設設備、運営基準に従っていない状況が著しいと認められる場合またはその疑いがある場合
        2. 介護報酬請求について不正または不正の疑いがある場合
        3. 不正の手段による指定等またはその疑いがある場合
        4. 高齢者虐待等があるまたはその疑いがある場合

        そして、監査が実施された結果、違反や不正行為が認められた場合は、その内容に応じて『改善勧告』や『改善命令』、『指定の一部効力停止』、『指定の全部効力停止』、『指定取消』といった行政指導・行政処分を受けることになります。

        訪問介護の実地指導・監査に必要な書類とは?

        訪問介護の運営指導や監査では、どのような書類を準備する必要があるのでしょうか。

        厚生労働省から運営指導で確認する書類が『標準確認文書』として示されていますので、見ていきましょう。

        *参考:厚生労働省 確認文書

        実地指導・監査に必要な書類(確認文書)の一覧

        1. 重要事項説明書 (利用申込者又は家族の同意があったことがわかるもの)
        2. 利用契約書
        3. サービス担当者会議の記録
        4. サービス担当者会議の記録
        5. 居宅サービス計画
        6. サービス提供記録
        7. 居宅サービス計画
        8. 訪問介護計画 (利用者又は家族の同意があったことがわかるもの)
        9. アセスメントシート
        10. モニタリングシート
        11. 勤務実績表/タイムカード
        12. 勤務体制一覧表
        13. 訪問介護員等の資格証
        14. 管理者の雇用形態が分かる文書
        15. 管理者の勤務実績表/タイムカード介護保険番号、有効期限等を確認している記録等
        16. 請求書
        17. 領収書
        18. 緊急時対応マニュアル
        19. サービス提供記録
        20. 運営規程
        21. 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書
        22. 研修計画、実施記録
        23. 方針、相談記録
        24. 業務継続計画
        25. 研修及び訓練計画、実施記録
        26. 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための指針、研修の記録及び訓練の記録、対策を検討する委員会名簿、委員会の記録
        27. 個人情報同意書
        28. 従業者の秘密保持誓約書
        29. パンフレット/チラシ
        30. 苦情の受付簿
        31. 苦情者への対応記録
        32. 苦情対応マニュアル
        33. 事故対応マニュアル
        34. 市町村、家族、居宅介護支援事業者等への報告記録
        35. 再発防止策の検討の記録
        36. ヒヤリハットの記録
        37. 虐待防止の対策を検討する委員会の開催記録
        38. 虐待の発生、再発防止の指針
        39. 虐待防止の研修及び訓練計画、実施記録
        40. 担当者を設置したことが分かる文書

        訪問介護の実地指導の標準確認項目とは?

        運営指導の当日には、どのような項目を確認されるのでしょうか。

        厚生労働省から運営指導で確認する項目が『標準確認項目』として示されています。

        一部抜粋していますので、どのような項目があるのかを見ていきましょう。

        *参考:厚生労働省 確認項目

        【人員】

        • 利用者に対し、訪問介護員等の員数は適切であるか
        • 必要な資格は有しているか
        • 管理者は常勤専従か、他の職務を兼務している場合、兼務体制は適切か

        【運営】

        • サービス担当者会議等に参加し、利用者の心身の状況把握に努めているか
        • 居宅サービス計画に沿ったサービスが提供されているか
        • 訪問介護計画にある目標を達成するための具体的なサービスの内容が記載されているか
        • 被保険者資格、要介護認定の有無、要介護認定の有効期限を確認しているか
        • 損害賠償すべき事故が発生した場合に、速やかに賠償を行うための対策を講じているか

          など

        訪問介護の実地指導のチェックリスト・自己点検票とは?

        介護保険法に定められる基準(人員基準・設備基準・運営基準)や介護報酬の算定を適正に行っているかどうかをチェックするために『自己点検票』があります。

        都道府県等のホームページから自己点検票の様式をダウンロードできますので、運営指導の前には必ず自己点検を行いましょう。

        ここでは、東京都が公開している訪問介護の自己点検票の一部を抜粋してご紹介していきます。

        人員に関する基準

        • 指定訪問介護事業者が指定訪問介護事業所ごとに置くべき訪問介護員等の員数は常勤換算方法で、2.5以上となっているか。
        • サービス提供責任者は、常勤で専ら訪問介護事業の職務に従事する者であって、以下のいずれかに該当するか。なお、一級課程については、看護師等の資格を有する者の場合、全科目を免除することが可能とされていたこと。
          • 介護福祉士
          • 実務者研修、介護職員基礎研修を修了した者
          • 訪問介護員養成研修1級課程を修了した者
          • 看護職員(看護師、准看護師、保健師)

        設備に関する基準

        • 指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画が設けられているか。
        • 事務室又は区画については、利用申込の受付、相談等に対応するのに適切なスペ-スが確保されているか。
        • 指定訪問介護事業所には、指定訪問介護の提供に必要な設備及び備品等を確保しているか。特に、手指を洗浄するための設備等感染症予防に必要な設備を備えているか。

        運営に関する基準

        • 指定訪問介護事業所の管理者は、当該指定訪問介護事業所の従業者及び業務の管理を、一元的に行っているか。
        • 指定訪問介護事業者は、訪問介護員等の資質の向上のために、その研修の機会を確保しているか。
        • 指定訪問介護事業者は、訪問介護員等に、その同居の家族である利用者に対する訪問介護の提供をさせてはいないか。

        介護給付費の算定及び取り扱い

        • 利用者に対して、指定訪問介護事業所の訪問介護員等が指定訪問介護を行った場合に、現に要した時間ではなく、訪問介護計画に位置付けられた内容の指定訪問介護を行うのに要する標準的な時間で所定単位数を算定しているか。
        • 通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合については、利用者に対して、通院等のため、指定訪問介護事業所の訪問介護員等が、自らの運転する車両への乗車又は降車の介助を行うとともに、併せて、乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助又は通院先若しくは外出先での受診等の手続き、移動等の介助を行った場合に、1回につき所定単位数を算定しているか。

        訪問介護の実地指導対策とは?

        実地指導対策とは、運営指導(実地指導)で指定権者に確認される項目を前々から把握し、報酬請求や日々の記録、加算算定などで不備がないように対策を講じておくことです。

        訪問介護の場合、特定事業所加算や初回加算の要件や、サービス提供責任者や管理者の兼務について指摘されることが多いようです。

        訪問介護の実地指導対策のポイント

        運営指導(実地指導)において指摘・指導を受けないためにはどのような対策が必要になってくるのか、ポイントをいくつかご紹介します。

        • 基本報酬、加算の算定要件を理解し、要件を満たした上で算定しているかを確認する。
        • 請求した介護報酬とサービス提供の実績に差異がないかを確認する。
        • 日頃から定期的に書類の不備がないかを確認する。
        • 研修の実施状況や寄せられた苦情の内容などを記録として残しているか確認する。
        • 事務所内は日頃から整理整頓をして、清潔を保持する。

        まとめ

        訪問介護の運営指導(実地指導)・監査について説明してきましたがいかがでしたか。

        運営指導で指摘や指導を受けないためには、「運営指導があるから書類を見直す」ではなく、日頃からの書類作成、整理、保管がとても大切です。

        ここでご紹介した内容が、皆様の事業所運営のお役に立てば幸いです。

        最後までお読みいただきありがとうございました。

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