訪問看護事業者の中には、新しい人事制度を導入するにあたって「就業規則にどのように記載すればいいの?」、「就業規則を変更する時にはどんな手続きが必要なの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、そのような経営者・管理者の皆様に向けて、就業規則を変更する際のルールや見直しのタイミングなどについて解説しています。
また、就業規則と賃金規程の無料でダウンロードできるテンプレートもご用意しておりますので、ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。
就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。
労働基準法などに基づく最低限度の項目だけでなく、事業所が独自に定める項目についても規定し、従業員が事業所で働く上で理解しておくべきルールを共有し、無用なトラブルを防ぐために作成しています。
就業規則の作成・変更についてのルールは、労働基準法に定められています。
(法令及び労働協約との関係) 第九十二条 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。 ② 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
(法令及び労働協約との関係)
第九十二条 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
② 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
就業規則は職場内で守らなければならないルールですが、法令で定められた基準に達していない項目については、その部分が無効になります。例えば、「残業代を支払わない」という記載をしても、法令で定められた基準に達していないため、支払義務はなくなりません。
ここからは、就業規則の作成義務や、記載事項のルールなどについて詳しく見ていきます。
労働基準法には、就業規則の作成義務がある事業者の範囲が定められています。
(作成及び届出の義務) 第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
パートタイマーも含めて従業員の人数が常時10人以上の事業所は、就業規則の作成義務があります。
作成および届出義務の人数要件は、事業場ごとの人数となっていることに注意が必要です。例えば、従業員が13人いる法人であっても、訪問看護ステーションに9人、居宅介護支援事業所に4人いて、それぞれ独立している場合などは、就業規則の作成義務はありません。
就業規則に記載が必要な項目についても、労働基準法で定められています。
【就業規則に記載する内容の分類】
それぞれ詳しく見ていきましょう。
絶対的記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない項目のことで、以下の事項が挙げられます。
【絶対的記載事項】
相対的記載事項とは、訪問看護ステーションにおいて制度として定めた場合には必ず記載しなければならない項目のことで、以下の事項が挙げられます。
【相対的記載事項】
任意的記載事項とは、就業規則に記載するかどうかは自由である項目のことで、以下の事項が挙げられます。
【任意的記載事項】
など
ここからは、訪問看護ステーションのパートタイマーにおける就業規則の記載例をご紹介していきます。
第〇条 (時間外労働、休日労働、深夜労働)
会社はパートタイマーに対し業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある。
第〇条 (非常緊急時の勤務)
災害その他避けることのできない事由により、又は業務の遂行上やむを得ないときは、全員又は必要なパートタイマーを時間外又は休日に勤務させることがある。
第〇条 (休日の振替)
会社は、業務上必要ある場合は、前条の規定にかかわらず、休日を他の労働日と振替えることができる。休日の振替を行う場合、事前に振替後の休日を指定してパートタイマーに通知する。
2.前項の予告にもかかわらず、正当な理由なくその日に勤務しないときは、欠勤として扱う。
第〇条 (生理休暇)
女性パートタイマーで生理日の就業が著しく困難な者が請求したときは必要な休暇をあたえる。
2.生理休暇日は無給とする。
第〇条 (退職金)
パートタイマーに退職金は支給しない。
第〇条 (安全衛生上の就業禁止)
他人に伝染するおそれのある疾病にかかっている者、又は疾病のため他人に害を及ぼすおそれのある者その他医師が就業不適当と認めた者は、就業を禁止する。
2.パートタイマーは、同居の家族又は同居人が他人に伝染するおそれのある疾病にかかり、又はその疑いのある場合には、直ちに●●に届出て、必要な指示を受けなければならない。
3.第1項の就業禁止期間は原則として無給とする。
第〇条 (表彰)
会社業績に貢献した者には、審査の上、表彰することがある。表彰の種類は以下の通りとする。
(1)個人表彰
(2)団体表彰
第〇条 (私有車通勤)
私有車通勤については原則として禁止する。但し、特別な事情により会社の許可を受けた場合はこの限りではない。
第〇条 (採用)
新たに採用されたパートタイマーは、入社後速やかに次の書類を提出しなければならない。ただし、会社が指示した場合は、その一部を省略することができる。
(1)住民票記載事項証明書
(2)会社指定の誓約書
(3)給与所得者の扶養控除申告書
(4)個人番号カード、通知カード
(5)雇用保険被保険者証(雇用保険加入者のみ、前職において雇用保険加入履歴がある者)
(6)源泉徴収票(入社年に前職での給与所得がある者)
(7)健康診断書
(8)その他会社が必要と認めたもの
就業規則は、事業所の見やすい場所への掲示、書面の交付などによって、従業員に周知する必要があります。
【就業規則の周知方法】
就業規則を変更する際には、必ず労働者側の意見を聞かなければならないと労働基準法に定められています。
(作成の手続) 第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。 ② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
(作成の手続)
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
就業規則を変更した際の流れは以下のようになります。
【就業規則変更時の流れ】
就業規則に記載されている事項は、事業所の現状と合致している必要がありますから、定期的な見直しをすることが大切です。
【就業規則を見直すタイミング】
社内の人事制度や給与制度を改善し、就業規則を変更したいと考えていても、「どのように就業規則に項目、内容を定めればいいのかわからない」という方は多いでしょう。
規定する内容によっては「間違って理解されること」や「定められていることの抜け道を探すような人が出てくること」もあり得ます。
不明なことや不安を感じているようでしたら、労働・社会保険に関するエキスパートである『社会保険労務士』に相談するのが良いでしょう。
無料でダウンロードできる就業規則のひな形をご用意しましたので、ぜひご活用ください。
※こちらのひな形ファイルに関しては、ユーザー様の責任にてご利用ください。 また、ご利用の際には、行政からの通知、事業所の最新の状況等に応じて、項目や内容を編集してください。
リンク:就業規則(正社員用)のテンプレートを無料ダウンロード(Wordファイル)
リンク:就業規則(パートタイマー用)のテンプレートを無料ダウンロード(Wordファイル)
ここまで、訪問看護ステーションの就業規則を変更する際のルールや作成義務、見直しのタイミングなどについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
規程に定める文言は、独特な語句・表現を用いるため、記載方法が合っているのか、過不足がないのか不安に感じる方は多いでしょう。
この記事でご紹介した内容やテンプレートファイルも参考にしていただき、不安を感じる方は専門家である社会保険労務士に相談してみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【監修者情報】 トリプルグッド社会保険労務士法人は、トリプルグッドグループのメンバーファームとして、トリプルグッド税理士法人、トリプルグッド司法書士法人、トリプルグッド行政書士法人、トリプルグッド法律事務所、トリプルグッドウェルスマネジメント株式会社、トリプルグッド株式会社など、さまざまな専門家が連携し、ワンストップでのサービスを提供。介護特化部門を擁し介護事業者の支援に力をいれている。