介護保険法に基づくサービスを提供する居宅介護支援事業所は、運営にあたって遵守しなくてはいけないルールが定められています。このルールが『運営に関する基準(運営基準)』です。
そしてこれらのルールを遵守するために、開業する前に内容を把握し、事業所内の規程や書類を整備する必要があります。
この記事では、居宅介護支援の運営基準について詳しく説明していますので、ぜひ最後までお読みください。
居宅介護支援の運営基準には、以下の項目が定められています。
事業者がサービスの提供開始にあたり、あらかじめ利用者様やそのご家族に対して、運営規程、サービスの選択に資する重要事項について文書を交付して説明し、同意を得なくてはならないことが定められています。 また、サービスの提供開始にあたり、複数の指定居宅サービス事業者等を紹介できることやこれまで居宅サービス計画に位置付けたサービスや指定居宅サービス事業者の割合等を説明しなくてはいけないことが定められています。
正当な理由なく、サービスの提供を拒んではならないことが定められています。
サービス実施地域などの理由から適切なサービスの提供が難しいと判断した場合には、他の居宅介護支援事業者を紹介するなどの措置を行わなくてはならないことが定められています。
サービスの提供にあたり、被保険者証によって、被保険者資格、要介護認定の有無、要介護認定の有効期間を確認しなくてはならないことが定められています。
要介護認定を受けていない利用申込者について、要介護認定の申請状況を確認し、申請していない場合には、利用申込者の意思を踏まえて申請に必要な援助を行わなくてはならないことが定められています。 また、要介護認定の更新申請についても援助しなければならないことが定められています。
初回訪問時や利用者様・そのご家族からの求められたタイミングで、介護支援専門員が身分を証する書類を提示できるように、身分を証する書類を携行させなければならないことが定められています。
居宅介護支援サービスを提供した場合は、利用者様から支払いを受ける利用料と居宅介護サービス計画費を比較して不合理な差額が生じないようにしなければならないことが定められています。 また、通常の事業の実施地域以外の地域にある居宅に訪問するための交通費は受け取ることができること、交通費をいただく場合は、事前に利用者様・そのご家族に説明し、同意を得なければならないことが定められています。
利用料の支払いを受けた場合は、利用料の額等を記載した指定居宅介護支援提供証明書を利用者様に交付しなければならないことが定められています。
サービスの提供にあたって、「要介護状態の軽減または悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療サービスとの連携に十分に配慮して行わなければならないこと」、「事業者は、自らその提供するサービスの質を評価し、常にその改善を図らなくてはならないこと」が定められています。
サービスの提供にあたって、居宅サービス計画の作成に関する業務の担当者、考え方、計画に位置付けるサービス、手順(アセスメント、原案作成、サービス担当者会議、居宅サービス計画の説明・交付、モニタリング、居宅サービス計画の変更)など、事業者・管理者・介護支援専門員が行わなければならないことが定められています。
事業者は毎月、市町村に対して居宅サービス計画のおいて位置付けられている居宅サービス等のうち、法定代理受領サービスとして位置付けたものを記載した文書を提出しなければならないことが定められています。 また、基準該当居宅サービスに係る特例居宅サービス費の支給に関する文書も提出しなければならないことも定められています。
利用者様が他の居宅介護支援事業所の利用を希望する場合など、利用者様から申出があった場合には、直近の居宅サービス計画や居宅サービスの実施状況に関する書類を利用者様に交付しなければならないことが定められています。
「利用者が、正当な理由なく、介護給付等対象サービスの利用に関する指示に従わないことによって要介護状態の程度が増進したと認められる場合」、「偽りその他不正な行為によって保険給付を受け、又は受けようとした場合」は、速やかに、市町村へ通知しなければならないことが定められています。
管理者は、従業者の管理、利用申込に係る調整、業務管理、そのために必要となる管理、指揮命令を行わなければならないことが定められています。
事業所の重要事項(以下の項目)を定めた運営規程を作成しなければならないことが定められています。
利用者様に対して適切な居宅介護支援サービスを提供できるように、「事業所ごとに介護支援専門員その他の従業者の勤務体制を定めておかなければならないこと」、「事業所の介護支援専門員によって居宅介護支援サービスを提供しなければならないこと」、「介護支援専門員の資質向上のために、研修の機会を確保しなければならないこと」、「職場におけるハラスメント等の防止のための措置を講じなければならないこと」などが定められています。
感染症や非常災害の発生時におけるサービスの提供を継続するための「業務継続計画」を策定し、従業者への周知、研修及び訓練の実施、定期的な見直し等を行わなければならないことが定められています。
事業を行うために必要な広さの区画、設備、備品を備えなければならないことが定められています。
事業者は、従業者の清潔の保持・健康状態についての管理を行わなければならないことが定められています。
事業者は、感染症が発生し、またはまん延しないように、委員会の定期的な開催、結果の周知、指針の整備、研修・訓練の定期的な実施などを行わなければならないことが定められています。
運営規程の概要、介護支援専門員の勤務体制、その他利用者様がサービスを選択するのに資する情報を、事業所の見やすい場所に掲示しなければならないことが定められています。
介護支援専門員その他従業者は、正当な理由なく、その業務上知り得た利用者様・そのご家族の秘密を漏らしてはいけないことが定められています。 事業者は、従業者だった者が正当な理由なく、業務上知り得た利用者様・そのご家族の秘密を漏らすことがないように、必要な措置を講じなければならないことが定められています。 また、サービス担当者会議等において、利用者様またはそのご家族の個人情報を用いる場合は、事前に文書により同意を得なければならないことも定められています。
事業所の広告において、その内容が虚偽・誇大なものであってはならないことが定められています。
管理者は、居宅サービス計画の作成・変更にあたり、介護支援専門員に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを位置付けるような指示を行ってはいけないことが定められています。 また、介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成・変更にあたり、利用者様に特定の居宅サービス事業者等によるサービスの利用するような指示を行ってはいけないことが定められています。 その他、特定のサービスを利用者様に利用させることの対償として金品その他の財産上の利益を収受してはいけないことが定められています。
事業者は、利用者様・そのご家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の措置を講じなければならないことが定められています。 また、苦情を受け付けた場合には、その内容等を記録し、市町村・国保連合会からの苦情に関する調査への協力、指示・助言等に沿った改善、報告等を行わなければならないことも定められています。
サービスの提供により事故が発生した場合には、市町村、利用者家族に連絡を行い、必要な対応を行わなければならないことが定められています。 また、その事故の状況や採った処置を記録し、賠償が必要になる場合には、速やかに損害賠償を行わなければならないことも定められています。
事業者は、虐待の発生、虐待の再発を防止するために、虐待防止対策委員会の定期的な開催と介護支援専門員に対する結果の周知、虐待防止のための指針の整備、介護支援専門員に対する虐待防止のための研修の実施、虐待防止のための措置を実施するための担当者の配置などに努めなければならないこと(令和6年4月1日以降は義務)が定められています。
事業者は、事業所ごとに経理を区分し、居宅介護支援事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならないことが定められています。
事業者は、従業者、設備、備品、会計に関する諸記録を整備しなければならないことが定められています。 また、サービスの提供に関する記録(以下の書類)を整備し、2年間保存しなければならないことも定められています。
運営基準のうち、以下の項目を満たしていない場合には、運営基準減算が適用となり、2カ月までは基本報酬を50%減算して算定することになります。また、運営基準を満たしていない状態が2カ月以上継続している場合は、基本報酬を算定できなくなります。
【運営基準減算の対象になる運営基準の項目】
また、運営基準には「事業所を運営するにあたり、必ず守らなくてはいけない最低限の基準」が定められていますので、違反した内容によっては、報酬の返還や指定の取消・効力停止といった行政指導・行政処分を受ける可能性もあります。
居宅介護支援の開業準備では、事業計画の作成、法人設立、指定申請書類の作成、従業員の採用、利用者獲得のための営業、加算算定のための準備など、やらなくてはいけないことがとても多いです。また、開業に向けた準備を進める中でわからないこと・迷ってしまうこともでてくるでしょう。
このように開業への不安や疑問がある方は、ぜひ『カイポケの開業支援サービス』のような開業をサポートするサービスを活用しましょう。
今回は、居宅介護支援の運営基準について説明してきました。 独立して、居宅介護支援事業所を開業する際には、運営基準を満たすための規程やマニュアル、書類を準備し、研修・訓練の実施なども必要になります。 開業に向けた準備として、運営基準を満たすための各種規程やマニュアルの整備などに不安に感じる場合は、居宅介護支援事業所向けの開業支援サービスの経験豊富なアドバイザーに相談してみることをおススメします。 ここでご紹介した内容が皆様の開業準備のお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。