居宅介護支援事業所を運営するにあたって守らなければならないルールが、運営基準として定められています。
そして、運営基準を遵守しているかどうかは市町村の運営指導(実地指導)で定期的に確認されることになります。
運営指導の通知が届いた事業所の経営者・管理者の皆様は、「運営基準のどの項目でどのような指摘をされることがあるの?」、「もしも運営基準を満たしていなかった場合には、どのようなペナルティがあるの?」などの疑問をお持ちではないでしょうか。
そうした疑問をお持ちの皆様にむけて、この記事では居宅介護支援事業所の運営基準と運営基準違反の事例をご紹介します。
居宅介護支援の運営基準には、以下のような様々な項目に対してルールが設定されています。
居宅介護支援の人員基準には、介護支援専門員(ケアマネジャー)や管理者などの最低限配置しなくてはならない職種、資格要件、配置基準などが定められています。
居宅介護支援の人員基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」には、人員に関する基準と運営に関する基準はありますが、他のサービス種別と違い、設備に関する基準はありません。
その代わりに、運営基準の中に「設備及び備品等」という項目があり、事業者が設置しなければならない設備や備品などが定められています。
居宅介護支援の設備及び備品等に関する基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。
ここからは、居宅介護支援の運営基準の項目をいくつかピックアップしてご紹介していきます。
1 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第十八条に規定する運営規程の概要その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。 2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、居宅サービス計画が第一条の二に規定する基本方針及び利用者の希望に基づき作成されるものであり、利用者は複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること、前六月間に当該指定居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画の総数のうちに訪問介護、通所介護、福祉用具貸与及び地域密着型通所介護(以下この項において「訪問介護等」という。)がそれぞれ位置付けられた居宅サービス計画の数が占める割合、前六月間に当該指定居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護等ごとの回数のうちに同一の指定居宅サービス事業者又は指定地域密着型サービス事業者によって提供されたものが占める割合等につき説明を行い、理解を得なければならない。 3 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、利用者又はその家族に対し、利用者について、病院又は診療所に入院する必要が生じた場合には、当該利用者に係る介護支援専門員の氏名及び連絡先を当該病院又は診療所に伝えるよう求めなければならない。 4 指定居宅介護支援事業者は、利用申込者又はその家族からの申出があった場合には、第一項の規定による文書の交付に代えて、第七項で定めるところにより、当該利用申込者又はその家族の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該指定居宅介護支援事業者は、当該文書を交付したものとみなす。 一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの イ 指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機と利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法 ロ 指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された第一項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者又はその家族の閲覧に供し、当該利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法) 二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに第一項に規定する重要事項を記録したものを交付する方法 5 前項に掲げる方法は、利用申込者又はその家族がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない。 6 第四項第一号の「電子情報処理組織」とは、指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機と、利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。 7 指定居宅介護支援事業者は、第四項の規定により第一項に規定する重要事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければならない。 一 第四項各号に規定する方法のうち指定居宅介護支援事業者が使用するもの 二 ファイルへの記録の方式 8 前項の規定による承諾を得た指定居宅介護支援事業者は、当該利用申込者又はその家族から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該利用申込者又はその家族に対し、第一項に規定する重要事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該利用申込者又はその家族が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
1 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第十八条に規定する運営規程の概要その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。
2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、居宅サービス計画が第一条の二に規定する基本方針及び利用者の希望に基づき作成されるものであり、利用者は複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること、前六月間に当該指定居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画の総数のうちに訪問介護、通所介護、福祉用具貸与及び地域密着型通所介護(以下この項において「訪問介護等」という。)がそれぞれ位置付けられた居宅サービス計画の数が占める割合、前六月間に当該指定居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護等ごとの回数のうちに同一の指定居宅サービス事業者又は指定地域密着型サービス事業者によって提供されたものが占める割合等につき説明を行い、理解を得なければならない。
3 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、利用者又はその家族に対し、利用者について、病院又は診療所に入院する必要が生じた場合には、当該利用者に係る介護支援専門員の氏名及び連絡先を当該病院又は診療所に伝えるよう求めなければならない。
4 指定居宅介護支援事業者は、利用申込者又はその家族からの申出があった場合には、第一項の規定による文書の交付に代えて、第七項で定めるところにより、当該利用申込者又はその家族の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該指定居宅介護支援事業者は、当該文書を交付したものとみなす。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機と利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された第一項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者又はその家族の閲覧に供し、当該利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに第一項に規定する重要事項を記録したものを交付する方法
5 前項に掲げる方法は、利用申込者又はその家族がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない。
6 第四項第一号の「電子情報処理組織」とは、指定居宅介護支援事業者の使用に係る電子計算機と、利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
7 指定居宅介護支援事業者は、第四項の規定により第一項に規定する重要事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
一 第四項各号に規定する方法のうち指定居宅介護支援事業者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式
8 前項の規定による承諾を得た指定居宅介護支援事業者は、当該利用申込者又はその家族から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該利用申込者又はその家族に対し、第一項に規定する重要事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該利用申込者又はその家族が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
など
居宅介護支援の具体的取り扱い方針は、利用者様の課題分析、サービス担当者会議の開催、居宅サービス計画の作成など、居宅介護支援事業所の業務内容や介護支援専門員の責務について記載されています。
指定居宅介護支援事業者は、利用者が他の居宅介護支援事業者の利用を希望する場合、要介護認定を受けている利用者が要支援認定を受けた場合その他利用者からの申出があった場合には、当該利用者に対し、直近の居宅サービス計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならない。
1 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対し適切な指定居宅介護支援を提供できるよう、指定居宅介護支援事業所ごとに介護支援専門員その他の従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。 2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に指定居宅介護支援の業務を担当させなければならない。ただし、介護支援専門員の補助の業務についてはこの限りでない。 3 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない。 4 指定居宅介護支援事業者は、適切な指定居宅介護支援の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより介護支援専門員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。
1 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対し適切な指定居宅介護支援を提供できるよう、指定居宅介護支援事業所ごとに介護支援専門員その他の従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。
2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に指定居宅介護支援の業務を担当させなければならない。ただし、介護支援専門員の補助の業務についてはこの限りでない。
3 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない。
4 指定居宅介護支援事業者は、適切な指定居宅介護支援の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより介護支援専門員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。
1 指定居宅介護支援事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定居宅介護支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。 2 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。 3 指定居宅介護支援事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
1 指定居宅介護支援事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定居宅介護支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 指定居宅介護支援事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
指定居宅介護支援事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。 一 当該指定居宅介護支援事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、介護支援専門員に周知徹底を図ること。 二 当該指定居宅介護支援事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。 三 当該指定居宅介護支援事業所において、介護支援専門員に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。 四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
指定居宅介護支援事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定居宅介護支援事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、介護支援専門員に周知徹底を図ること。
二 当該指定居宅介護支援事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定居宅介護支援事業所において、介護支援専門員に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
運営基準減算とは、運営基準として定められている以下の項目について遵守できていない場合に適用となる減算です。
運営基準減算が適用になると、適用となった月から2カ月までは基本報酬を50%減算することになり、その状態が2カ月以上継続している場合は、基本報酬を算定できなくなります。
・利用者様が複数の介護サービス事業所を紹介するように求めることができること
・前6月間の事業所が作成した居宅サービス計画のうち同一の介護サービス事業所によるサービス提供の割合等
運営基準を満たしていないことに気づかなかった場合は、運営基準減算を算定していないということになります。このような場合は、運営指導で違反の事実が明らかになり、行政指導または行政処分を受けることになります。
指導・処分の内容によりますが、介護報酬の返還や指定の効力停止、指定取消などを受けることは事業所の経営に大きく影響しますので、十分に注意しましょう。
ここでは、居宅介護支援事業所の運営基準違反による行政指導や行政処分の事例をいくつかご紹介します。
約2年7箇月の間に、以下のとおり著しい運営基準違反が確認された。 (ア) 居宅サービス計画が作成されていない事例 (イ) サービス担当者会議が開催されていない事例 (ウ) サービス担当者会議に必要な参加者が参加していない事例 (エ) 居宅サービス計画の説明・同意・交付がされていない事例 (オ) モニタリング訪問がされていない事例 (カ) モニタリング結果記録が確認できない事例
約2年7箇月の間に、以下のとおり著しい運営基準違反が確認された。
(ア) 居宅サービス計画が作成されていない事例
(イ) サービス担当者会議が開催されていない事例
(ウ) サービス担当者会議に必要な参加者が参加していない事例
(エ) 居宅サービス計画の説明・同意・交付がされていない事例
(オ) モニタリング訪問がされていない事例
(カ) モニタリング結果記録が確認できない事例
※運営基準第4条、13条に違反
居宅介護サービス計画費の請求において、以下のとおり、運営基準減算に該当する状態にあるにもかかわらず、当該減算をすることなく不正にこれを請求した。 (1) モニタリング結果を記録していない又はサービス担当者会議を開催していない。(利用者49名分) (2) サービス提供の開始に際し、複数事業者の紹介に関する事項及び選定理由の説明の求めに関する事項について文書交付による説明を行っていない。(利用者2名分)
居宅介護サービス計画費の請求において、以下のとおり、運営基準減算に該当する状態にあるにもかかわらず、当該減算をすることなく不正にこれを請求した。
(1) モニタリング結果を記録していない又はサービス担当者会議を開催していない。(利用者49名分)
(2) サービス提供の開始に際し、複数事業者の紹介に関する事項及び選定理由の説明の求めに関する事項について文書交付による説明を行っていない。(利用者2名分)
※運営基準第4条、第13条に違反
介護支援専門員2名が、指定を受けた事業所において業務を行い、勤務が管理されるべきところ、同法人が運営する別の事業所で居宅介護支援に係る台帳の保管及び業務等を行い、勤務の状況が事業所ごとに一体的に管理されておらず、運営基準を満たしていなかった。
※運営基準第19条に違反
運営基準に違反しないためには、事業所として従業員にルールを浸透させ、確実に実行してもらうための取り組みが重要になります。
それでは、具体的な取り組みについていくつかご紹介していきます。
居宅介護支援事業所の運営基準と運営基準違反の事例についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
運営基準に違反した場合、故意・悪質であるという判断は行政が下すことになりますが、たとえ故意・悪質ではないと判断されたとしても介護報酬の返還、減算の適用に繋がる可能性は十分にありますので、運営基準を遵守する体制は必要です。
また、管理者には「運営基準の規定を従業員に遵守させるために必要な指揮命令を行わなければならない」という責務が規定されていますので、ここでご紹介した内容を参考にしていただき、コンプライアンスの重要性を事業所で浸透させる取り組みを行いましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。