「居宅サービス計画書」(ケアプラン)は介護保険の被保険者が要介護認定を受けたのち、介護保険サービスのうちの主に居宅サービスを利用する際に必要な書類です。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーが居宅サービス計画書を作成する際は、利用者の状況や要望にもとづいて「これからどのような生活をおくりたいのか」といった目標を長期(目安として1年ほど)と短期的(目安として3ヵ月~半年ほど)それぞれ設定し、 目標の達成に向けて利用するサービスなどの種類や内容、頻度を具体的に記載します。厚生労働省が示している居宅サービス計画書の「標準様式」は「第1表」から「第7表」までで構成されていますが、ここでは第1表と第2表について解説します。
なお、厚労省の標準様式を必ず使用する必要はありませんが、法令の趣旨に沿った記載事項を盛り込む必要があります。
※標準様式は2021年3月に改正されています。
居宅サービス計画書は、介護サービスなどの支援を必要とする人が各サービス事業所との契約を検討する段階で作成します。居宅介護支援事業所で計画書の原案を作成し、利用者や家族と内容について確認のうえ、問題がなければ利用者と家族が同席のもとで、「サービス担当者会議」を開き、居宅サービス計画書を完成させます(利用者や家族が作成することも可能ですが行政の書類提出やサービス事業所との連絡・調整なども行う必要があります)。
また、居宅介護支援事業所の運営基準では、少なくとも月に1度利用者の自宅を訪れモニタリングを行うことが定められており、その際に利用者の状況やニーズなどについて変更があれば計画を更新します。
なお、計画書の内容を変更する際、厚労省の記載要領では、「都度、別葉(別紙)を使用して記載するもの」と定められています。ただし、サービス内容に影響がほとんど認められないような軽微な変更(サービス提供の一時的な曜日変更や回数変更など)では、変更箇所の冒頭に変更時点を明記し、同一用紙に継続して記載することが可能です。
居宅サービス計画書のうち、アセスメントをもとにまとめた利用者と家族の意向、総合的な援助の方針を記載する第1表と、利用者の課題(ニーズ)やそれに伴う長・短期での目標、課題の改善に向けた具体的な介護サービスの内容を記載する第2表について紹介します。
★21年3月改正項目
厚労省の記載要領によると、第1表の記載項目は下記の通りです。
(1)利用者名欄: 居宅サービス計画の利用者名を記載します。
(2)生年月日欄: 利用者の生年月日を記載します。
(3)住所欄:利用者の住所を記載します。
(4)居宅サービス計画作成者氏名欄: 計画作成者(介護支援専門員)の氏名を記載します。 (5)居宅介護支援事業者・事業所名及び所在地欄: 計画作成者が所属する居宅介護支援事業者・事業所名と所在地を記載します。
(6 )居宅サービス計画作成(変更)日欄:居宅サービス計画を作成または変更した日を記載します。
(7)初回居宅サービス計画作成日欄: 居宅介護支援事業所においてその利用者に関する居宅サービス計画を初めて作成した日を記載します。
(8)初回・紹介・継続欄:利用者が、居宅介護支援事業所において初めて居宅介護支援を受 ける場合は「初回」に、ほかの居宅介護支援事業所(同一事業者のほかの事業所を含む)や介護保険施設から紹介された場合は 「紹介」に、それ以外の場合は「継続」に○をつけます。
※同一事業所で過去に居宅介護支援を提供した経緯がある利用者が、一定期間経過後に介護保険施設から紹介を受け た場合、「紹介」と「継続」の両方を○で囲みます。
(9)「認定済・申請中」欄:要介護認定を新たに申請中(前回「非該当」となり、再度申請している場合を含む)の場合や、区分変更を申請している場合、更新申請中で前回の認定有効期間を超えている場合は、「申請中」に○をします。それ以外の場合は「認定済」に○をします。
(10)「認定日」欄:「要介護状態区分」が認定された日(認定の始期。初回申請者の場合は申請日)を記載します。申請中の場合は、申請日を記載します。
認定に伴い居宅サービス計画を変更する必要がある場合は、作成日の変更を行います。
(11)「認定の有効期間」欄: 被保険者証に記載された「認定の有効期間」を転記します。
(12)「要介護状態区分」欄: 被保険者証に記載された「要介護状態区分」を転記します。
★(13)「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」欄: 利用者やその家族が、どのような内容の介護サービスをどの程度の頻度で利用しながら、どのような生活をしたいと考えているのか意向を踏まえて課題分析を行い、その結果を記載します。
その際、自立支援に資するために解決しなければならない課題が把握できているか確認します。利用者の主訴や相談内容などを踏まえ、利用者の能力や生活環境などの評価を含めたうえで利用者が抱える問題点を明らかにしていく必要があります。
なお、利用者及びその家族の生活に対する意向が異なる場合は、各々の主訴を区別して記載します。
(14)「認定審査会の意見及びサービスの種類の指定」 欄:被保険者証を確認し、「認定審査会意見及びサービスの種類の指定」が記載されている場合、これを転記します。
★(15)「総合的な援助の方針」欄: 課題分析によって抽出された、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」に対応して、居宅サービス計画を作成する介護支援専門員をはじめ各種のサ ービス担当者が、どのようなチームケアを行おうとするのか、利用者及び家族を含んでともに確認し、検討の上で総合的な援助の方針を記載します。
また、利用者の状態が急変した場合の連携等の対応方法について、対応機関やその連絡先を確認します。また、ケアチームにおいても、どのような場合を緊急事態と考えているかという認識を合わせ、「緊急時を想定した対応の方法等について記載することが望ましい」とされています。
★(16)「生活援助中心型の算定理由」欄: 介護保険給付対象サービスとして、居宅サービス計画に生活援助中心型の訪問介護を位置付けることが必要な場合、該当する理由に○をします。
家族らに障害や疾病がない場合でも、やむをえない事情によって家事が困難な場合などについては、「3.その他」に○をして、その事情を簡潔明瞭に記載します。例えば、 家族が高齢で筋力が低下していて難しい家事がある場合や、家族が介護疲れで共倒れの危険性があるなど深刻な問題が起きてしまう恐れがある場合、家族が仕事で不在の時に行わなくては日常生活に支障がある場合などが想定されます。
第2表は、今回の改正において様式自体の変更はありません。
ただし、記載すべき内容には変更点がありますので下記記載要領の解説をご確認ください。
第2表作成時の全体的な流れとして、利用者の生活全般の解決すべき課題(ニーズ)について、優先順位を見立て、それを元に目標を立てます。
その際、
・ 利用者自身の力で取り組めること
・ 家族や地域の協力でできること
・ ケアチームが支援すること、
それぞれの視点から介入によってできるようになることなどを整理し、具体的な方法や手段を記載します。
各目標に対する援助内容は、「いつまでに、誰が、何を行い、どのようになるのか」という目標達成に向けた取り組みの内容やサービスの種別・頻度や期間を設定します。
厚労省の記載要領による各項目についての記載は下記の通りです。
★(1)「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄: 利用者の自立を阻害する要因などについて、個々の解決すべき課題(ニーズ)を相互関係を含めて明らかにし、課題を解決するための要点がどこにあるかを分析し、課題が改善した場合の効果を予測して、優先度合いが高いと判断できるものから順に記載します。
(2)「目標(長期目標・短期目標)」欄: 「長期目標」は、基本的には個々の解決すべき課題に対応して設定します。 解決すべき課題が短期的に解決される場合やいくつかの課題が解決されて初めて達成可能な場合は、複数の長期目標が設定されることもあります。
「短期目標」は、解決すべき課題や長期目標に段階的に対応し、解決に結びつける位置付けのものです。
目標は誰が見てもわかりやすい具体的な内容で記載し、実際に解決が可能と見込まれるものを設定します。
(3)(目標に設定する)「期間」 欄:
「長期目標」の「期間」は、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」を、 いつまでに、どのレベルまで解決するのか期間を記載します。
「短期目標」の「期間」は、長期目標の達成のために踏むべき段階として設定した短期目標の達成期限を記載します。 原則として、開始時期と終了時期を記入しますが、終了時期が特定できない場合などは開始時期のみ記載するなどしても問題ありません。 要介護認定の有効期間も考慮します。
★(4)「サービス内容」欄:
「短期目標」の達成に必要かつ最適なサービスの内容とその方針を明らかにし、適切・簡潔に記載します。
この際、家族らによる援助や(必要に応じて)保険給付対象外サービスも明記します。(※21年度改定で見直された「特定事業所加算」の算定要件です。詳細は後述します。)
また、計画作成時に、既に提供されているサービス についても、そのサービスが利用者のニーズに反することなく、利用者や家族に定着している場合は、これも記載します。
なお、居宅サービス計画に厚生労働大臣が定める回数以上の訪問介護を位置付ける場合は、その妥当性を検討し、訪問介護が必要な理由を記載する必要があります。
(5)「保険給付の対象となるかどうかの区分」 欄:保険給付対象のサービスに○をします。
(6)「サービス種別」欄: サービス内容とその提供方針を適切に実行できる居宅サ ービス事業者などを選定し、具体的な「サービス種別」とサービスを提供する「事業所名」を記載します。
家族が担う介護部分についても、誰が行うのかを明記します。
(7)「頻度」欄: サービス内容欄に掲げたサービスをどの程度の頻度(一定期間内での回数、実施曜日など)で実施するかを記載します。
(8)「期間」欄:サービス内容欄に掲げたサービスをどの程度の期間にわたって実施するかを記載します。 その際には要介護認定の有効期間も考慮します。
※福祉用具貸与または特定福祉用具販売を居宅サービス計画に位置付ける場合は、「生活全般の解決すべき課題」・「サービス内容」などにこれらのサービスが必要な理由を記載します。 理由は、別の用紙に記載しても構いません。
・第1表の「総合的な援助の方針」は、ケアプランの全体像を記す内容のため、最後に書くべき項目と言えます。先に第2表や第3表で具体的な目標や援助内容などを設定したあとに記載することで、全体的な方針と具体的な支援内容の間に整合性をとることができます。
・21年度介護報酬改定では、特定事業所加算(I)(II)(III)(A)の算定要件に、「必要に応じて、多様な主体等が提供する生活支援のサービス(インフォーマルサービスを含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること」が盛り込まれています。
それを受けて第2表のサービス内容欄には、(必要に応じて)保険給付対象外サービスも明記するよう促されています。
なお、21年3月26日発出のQA(VOL3)の問113では、必要性を検討した上で居宅介護支援事業所が計画書にインフォーマルサービスの利用を位置付けなかった場合でも、同加算が算定可能であることが示されています(ただし理由を説明できるようにしておく必要があります)。
(注)記事の内容は、2021年4月末時点の情報を基に作成しています。今後、厚生労働省より解釈通知、各自治体より詳細な通知・資料などが公開された場合、具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報を基にご判断をいただきますようお願い致します。配信日:2021年6月17日