本人の尊厳を追求して自分らしく生きてより良い最期を迎えるためには、人生の最終段階における医療・ケアをどうするべきかということが重要になります。この医療・ケアを適切なものとするには、どういった形でプランニングすればよいものになるのかを明確にするという観点から作成されたガイドラインです。
近年の高齢化や地域包括ケアシステムの構築が進む中で諸外国でも普及してきているアドバンス・ケア・プランニングという概念を取り込みながらガイドラインも改定されてきています。
現時点では本人、家族と医療従事者、介護従事者が最善となる医療・ケアを作り上げようとしたときに、どうすればよいかというプロセスを示すものになっています。本人が希望する最期の迎え方は日々変化します。
そのため、このガイドラインに沿って本人、家族と医療ケアチームで日ごろから話し合いを重ねていくことが重要になります。またこのガイドラインに沿って話し合ったことは、その都度文書にまとめておくことが必要です。
人生の最終段階を迎えた本人家族と医療・介護従事者が最善の医療介護サービスを作るためのプロセスを示すものです。
本人の希望する医療介護サービスを提供することを第一に考えます。医療介護サービスの提供に際しては本人の意思決定(インフォームド・コンセント)が大切です。
しかし状態によっては本人の決定した意志を確認することが困難となったり、本人の意思はつねに変わり続けることが考えられることから、本人のみではなく、家族や信頼できる人などを含めて話し合いは続けられることが求められます。万一本人の意思が確認できなくなったときには、それまでの本人の人生観や価値観、どのような生き方を望むのかを含めてできる限りの把握に努める体制を準備しておくことが必要です。話し合いの中で合意形成ができない場合には、外部の専門家などの話し合いの場を設け、その助言を貰いながら医療介護方針を見直し合意形成することが求められます。
これらのプロセスによって話し合った内容や合意した内容については、その都度文書にまとめておくことが必要です。
人生の最終段階において本人の大切にしていることや望み、医療介護サービスにどのようなことをのぞんでいるかを明確にするため、本人自身や家族などの本人が信頼する人を交えて、医療介護サービス従事者と話し合うことをアドバンスケアプランニングといいます。
万一命の危険が迫った場合、約4分の3の人は自分の意志を伝えることができなくなるといわれています。そのような時でも、あらかじめ本人の意志が周囲に知らせされていれば、意思どおりの治療や介護の方針に沿ってサービス提供することができます。大切な人生の最終段階において、本人の希望するサービス提供をするために必要となるのがアドバンスケアプランニングです。
同時に本人の意志を代弁することを求められることになった周囲の人の心理的負担を減らすこともできます。
ではどのようにアドバンスケアプランニングを進めれば良いのでしょうか。
まずは本人の意志を確認することから始めます。自身が最期に向けて大切にしたいことを明確にします。確認するべきことは多岐にわたりますが、少しでも長く生きたいのか、状況によっては積極的な延命は望まないか、といったことから始まり、どのような介護を受けたいか、経済的にはどのような方針で介護してほしいか、万一自分の意志が伝えられない状況になったときは誰に自分の意志を代弁してほしいか、などの項目を話し合いのなかで確認していきます。
これらの項目を確認していく中で本人や家族などだけでは決定できないことも考えられます。そのような時には本人にサービス提供する側の医療、介護従業者の意見を聞けるよう、医療介護従事者も話し合いに同席することが求められます。これらの話し合いは一回話し合って方針が決まったらよいというものではありません。本人の体調、心理状況や病状の進行によって本人の希望する内容というものは常に変化するものです。本人の状況に変化があったと考えられるときには周囲が積極的に改めてアドバンスケアプランニングを行うことで、その時により適したプランになっていきます。
アドバンスケアプランニングのことを人生会議ということもあります。人生の最終段階をより良いものとするための会議です。必要に応じて何度も話し合うようにします。
株式会社ケアモンスター 代表取締役。社会福祉士・介護支援専門員。1975年生まれ石川県出身。 整形外科(老人保健施設)や脳神経外科等に勤務し、医療ソーシャルワーカーや介護支援専門員として、組織や地域のマネジメント業務に携わりながら、医療経営を学ぶ。 その後、医療法人の理事、MS法人の取締役として、クリニックを中心とした介護事業の立ち上げや運営を行う。 2014年に、コンサル事業・セミナー事業を主に起業。現在は、今の福祉事業の概念を壊しながら、「新しい価値」と「新しい仕組み」を創造する!ということをテーマに活動中。