この動画は、「自然災害発生時におけるBCPの作成」シリーズの自然災害BCPの作成準備(BCPの理解)編です。 視聴に必要な時間は、標準速度で17分53秒です。 資料も無料でダウンロードいただけます。
<解説>株式会社ケアモンスター代表取締役:田中大悟さん
このシリーズは、順番にご視聴いただくことで自然災害が発生したときのためのBCPを策定した後、PDCAサイクルを確実に回していくための理解を深めていけるように作成しています。
このページでは、事業継続計画におけるマネジメントサイクル(概要説明編で説明)の概念に沿い、「自然災害BCPの作成準備(BCPへの理解)」についてお話します。
この動画で解説する内容は以下の通りです。
1:業務継続計画(BCP)とは 2:事業継続マネジメント(BCM)とは 3:事業継続マネジメントサイクルのイメージ 4:介護施設・事業所における業務継続計画 5:防災計画と自然災害 BCP の違い 6:介護サービス事業者に求められる役割 7:BCP 作成のポイント 8:自然災害 BCP の全体像の理解
BCPとは Business Continuity Plan の略称で、業務継続計画などと訳されます。
新型コロナウイルス等の感染症や大地震などの災害が発生すると、通常通りに業務を実施することが困難になります。
まず、業務を中断させないように準備するとともに、中断した場合でも優先業務を実施するため、あらかじめ検討した方策を計画書としてまとめておくことが重要です。
【 BCP において重要な取組例として 】
・各担当者をあらかじめ決めておくこと(誰が、いつ、何をするか) ・連絡先をあらかじめ整理しておくこと ・必要な物資をあらかじめ整理、準備しておくこと ・上記を組織で共有すること ・定期的に見直し、必要に応じて研修・訓練を行うこと 等が挙げられます。
BCMとは Business Continuity Managementの略称で、事業継続の為の戦略と言われたりもします。
介護事業所におけるBCPの作成は短期間でできるものではなく、作成のハ-ドルは高いため、管理者が一人で抱え込まないことが重要な視点です。
その為、BCP作成の為には、まずBCP作成の為の委員会を立ち上げることが、有効な手段と考えられます。
事業継続マネジメントは、中小企業庁のBCPで取り入れられている考え方で、これを理解することで、BCP作成を俯瞰的なイメージで理解することが出来ます。
➀BCPの目的
BCP とは「平常時の対応」「緊急時の対応」の検討を通して、 1:事業活動レベルの落ち込みを小さくし、 2:復旧に要する時間を短くすることを目的に作成された計画書です。
介護施設等では災害が発生した場合、一般に「建物設備の損壊」「社会インフラの停止」「災害時対応業務の発生による人手不足」などにより、利用者へのサービス提供が困難になると考えられています。
しかし、利用者の多くは、日常生活・健康管理、さらには生命維持の大部分を介護施設等の提供するサービスに依存しており、サービス提供が困難になることは利用者の生活・健康・生命の支障に直結します。
このような理由などから、他の業種よりもサービス提供の維持・継続の必要性が高く、災害発生時などの対応について事前準備が求められます。
防災計画の主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」ですが、この目的は、BCP でも大前提となっています。
BCPの目的は、防災計画の目的に加えて、「優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する」、または、「早期復旧すること」があり、2つの計画は密接な関係にあります。
➀サービスの継続
介護事業者は、入所者・利用者の健康・身体・生命を守るために重大な責任を担っています。
【入所施設】
入所施設では自然災害発生時にも業務を継続できるよう事前の準備を入念に進めることが必要です。
入所施設は入所者に対して「生活の場」を提供しており、たとえ地震等で施設が被災したとしても、サービスの提供を中断することはできないと考え、被災時に最低限のサービスを提供し続けられるよう、自力でサービスを提供する場合と他へ避難する場合の双方について事前の検討や準備を進めることが必要です。
【通所系・訪問系サービス】
通所系事業所や訪問系事業所においても、極力業務を継続できるよう努めるとともに、万一業務の縮小や事業所の閉鎖を余儀なくされる場合でも、利用者への影響を極力抑えるよう事前の検討を進めることが肝要です。
➁利用者の安全確保
介護事業者は、体力が弱い高齢者等に対するサービス提供を行います。それを踏まえて自然災害が発生した場合は、深刻な人的被害が生じる危険性があるため、「利用者の安全を確保する」ことが最大の役割です。
そのため、「利用者の安全を守るための対策」が何よりも重要となります。
➂職員の安全確保
自然災害発生時や復旧時に業務継続を図る際、長時間勤務や精神的打撃など職員の労働環境が過酷な状態にあることが懸念されます。
したがって、労働契約法第5条(使用者の安全配慮義務)の観点からも、職員の過重労働やメンタルヘルス対応への適切な措置を講じることが使用者の責務です。
➃地域への貢献
介護事業者の社会福祉施設としての公共性を鑑みると、施設が無事であることを前提に、施設がもつ機能を活かし被災時に地域へ貢献することも重要な役割となります。
➀正確な情報集約と判断ができる体制の構築
災害発生時の迅速な対応には、平時と緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築がポイントとなります。
そのためには、下記の内容を明確にしておくことが重要と考えられます。
➁自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて、準備する
【事前の対策(今何をしておくか)】
【被災時の対策(どう行動するか)】
1:利用者・職員の安否確認、安全確保 2:建物・設備の被害点検 3:職員の参集
➂業務の優先順位の整理
施設・事業所や職員の被災状況によっては、限られた職員・設備でサービスを継続する必要があることも想定されます。
そのため、可能な限り通常通りのサービス提供を行うことを念頭に、職員の出勤状況、被災状況に応じて対応できるよう、業務の優先順位を整理しておくことが重要になります。
➃普段からの周知・研修、訓練
BCP は、作成するだけでは実効性があるとは言えません。
危機発生時においても迅速に行動が出来るよう、関係者に周知し、平時から研修、訓練(シミュレーション)を行う必要があります。また、最新の知見等を踏まえ、定期的に見直すことも重要です。
さらに【基準省令】と【解釈通知】を一読し、研修や訓練の実施におけるルールを把握しておくことも重要です。
※動画内で図解
今回は、【自然災害BCPの作成準備 】として、
についてお話しました。
今回のシリーズを視聴して、引き続きBCPの作成にチャレンジしていきたいとみなさまに思っていただけたとすれば、大変うれしく思います。
株式会社ケアモンスター 代表取締役。社会福祉士・介護支援専門員。1975年生まれ石川県出身。 整形外科(老人保健施設)や脳神経外科等に勤務し、医療ソーシャルワーカーや介護支援専門員として、組織や地域のマネジメント業務に携わりながら、医療経営を学ぶ。 その後、医療法人の理事、MS法人の取締役として、クリニックを中心とした介護事業の立ち上げや運営を行う。 2014年に、コンサル事業・セミナー事業を主に起業。現在は、今の福祉事業の概念を壊しながら、「新しい価値」と「新しい仕組み」を創造する!ということをテーマに活動中。