厚生労働省は「2020年度全国介護保険担当課長会議」を開催し、来年度の介護予防・日常生活総合事業の対象者に拡大案についての説明が認知症施策・地域介護推進課からありました。
2014年の介護保険法改正で、訪問介護と通所介護においては、要支援者は介護保険給付から外れ、総合事業を利用するようになりました。そのため、サービスの報酬や受給期限などが各市町村によって異なっています。
来年度の改定では、総合事業の対象者の範囲について下記のような見直しが議論されています。
➀本人の希望を踏まえて地域とのつながりを継続することを可能とする
➁サービス価格の上限について、市町村が創意工夫できるようにする
上記の➀➁等で議論されていることが、各市町村によって実施可能となった場合、各市町村は、その対応を迫られることになるわけですが、各サービス事業者にとっても、各市町村の判断内容が、自事業所にとって、チャンスとなる事なのか、脅威となる事なのか時流を判断し、地域に合った事業戦略を改めて考える必要がでてきます。
<3者の視点の違いという残された課題>
➀事業収益を確保したい事業所側の本音
例えば、この度の新型コロナウイルス下での特例措置の視点から、通所介護では、利用者の同意をいただけた場合、サービスを伴わない介護給付の請求を算定することが可能と国は通達している為、事業者としては、事業運営に必要な、高い報酬を受けたい思いはあるが、利用者に対して、説明はしにくく、制度と事業所の実情と利用者との板挟みになっている現状があります。
➁利用者負担を抑えたい利用者側の本音
新型コロナウイルス下での特例措置の視点から、「本人が同意」した場合は、高い利用料を支払わなければならないという心理が働きます。当然支払いは安いに越したことはありません。
今回の総合事業の改定案の、「本人の希望」という前提をこれに合わせて考えてみると、介護給付より総合事業のサービスの方が安価であるという認識を持った場合、利用者が安いサービスを選ぶ可能性は多いにあります。このことは、要介護者の保険給付外しや、サービスの規制につながる可能性があります。
➂中長期的に介護給付を減らしたい国の本音
介護保険給付費も年々増加しており、2025年には介護給費は15.3兆円以上にも上ると推定され、国としては削減していきたいところであるといえます。地域住民・家族だけではなく、訪問・通所介護事業所の存続にも関わってくる内容なので、今後慎重な議論が必要です。
株式会社ビジケア代表取締役。看護師。訪問看護ステーション設立に参画した自身の経験をもとに、多数の事業所運営サポートを実施。看護師の視点で現場職員への教育や収益改善のサポートを行う。全国各地で年間700人を超える訪問看護ステーションの経営者・管理者向けに講義・セミナーを実施している。